
犬に生肉だけ与えるのは危険!?下痢にならない生肉の与え方・量は?

「野生の犬と同じように、愛犬には生肉しか与えていない!」
そんな飼い主さんはいませんか?
野生の犬と同じように生肉や骨を中心とした食スタイル「BARF(バーフ)」が、近年とくに注目されるようになりました。
BARFBARF(バーフ)
BARFとは、「Biologically Appropriate Raw Food」の頭文字から取ったもの
意味は、「生物学的に適正な生食」
野生の犬が自然界で捕食するように、動物の生肉や骨を中心とする食スタイルのこと
ただ、「野生の犬の食事=生肉だけ」とかんちがいして、愛犬に生肉しか与えないのは絶対にダメ!
生肉だけでは、犬は体に必要な栄養を摂取できません。
そこで、犬に生肉を与えるメリット・デメリット、生肉の上手な与え方、お肉の量、おすすめの肉の種類について、一緒に確認していきましょう。
近年、野生の犬の食事に近いBARF(バーフ)が注目されています
愛犬に生肉を与えると、どんなメリットがあるのか、またどんな点に注意すれば良いのか見ていきましょう
それではまいります。
目 次
犬に生肉を与えるメリット

まずは生肉を与えるメリットから確認しましょう。愛犬に生肉を与えることは、下記のようなメリットがあります。
生肉のメリット
- 熱に弱い栄養素や酵素を丸ごと摂取できる
- 体内吸収が緩やかで、血糖値が上がりにくい
- 水分が多く、水分補給もできる
1つずつ確認しましょう。
草食動物の肉や内臓から、植物成分や酵素を補う

愛犬に生肉を与える1番のメリットは、熱に弱い栄養素や酵素などを丸ごと摂取できること。
とくに酵素を摂取できることが、1番のメリットだと考えられています。
その理由は、酵素は食べ物の消化や栄養の吸収に欠かせないからです
そのため野生の犬は、牛や馬などの草食動物の肉や内臓から、犬が消化しにくい植物成分やその中に含まれる酵素を補っていると考えられています。
それでは、酵素とはどのようなものか簡単に確認しましょう。
酵素には、「消化酵素」「代謝酵素」「食物酵素」の3つ種類があります。
【消化酵素】 | 食べ物の消化、栄養の吸収を助ける |
【代謝酵素】 | 体内代謝をコントロールする |
【食物酵素】 | 消化をサポートして、消化酵素の大量消費を防ぐそれにともない、代謝酵素の減少も予防する |
このうち消化酵素と代謝酵素は「潜在酵素」と呼ばれ、体内でつくられる酵素。
一方、食物酵素は食品に含まれる酵素です。
食品に含まれる栄養を吸収して体のエネルギーに利用するには、消化酵素や代謝酵素が欠かせません。
とくに、愛犬に味の濃い人の食べ物などを与えると、消化酵素や代謝酵素が大量に消費されます。
ところが、消化酵素や代謝酵素が体内でつくられる量には、限りがあるとされています。
そのため大量消費が何度も繰り返されると、消化酵素や代謝酵素が不足して栄養の消化・吸収がスムーズにおこなわれなくなるのです。
そこで必要となるのが、食品に含まれる食物酵素。
食物酵素は、食べ物の消化を助ける働きがあるため、消化酵素が大量に消費されるのを防ぐ効果があります。
ちなみに、消化酵素と代謝酵素はどちらも体内で作られるため、消化酵素の大量消費は代謝酵素の減少にも影響を与えます。
しかし食物酵素を摂取すると消化酵素の大量摂取が防止されるので、代謝酵素の減少の予防にもつながるのです。
生肉には、食べ物の消化や栄養の吸収に欠かせない「酵素」を摂取できる大きなメリットがあります!
生肉はドッグフードより、ゆっくり吸収される

また生肉はドッグフードより時間をかけて消化されるので、血糖値が急上昇しません。
そのため肥満や糖尿病の予防に効果的です。
なお、肉の消化については、「生肉のほうが消化しやすい」という意見と「加熱した肉のほうが消化しやすい」と両方の意見があります。
これは肉に含まれるタンパク質が、熱によって変性(タンパク質のもととなるアミノ酸の構造が変わる)ため。
調べても両方の意見があり、私にはむずかしくて困りました・・。
そこで、この件については、薬に頼らない体質改善を重視した「須崎動物病院」の院長であり、「ペット食育協会」の会長である須崎恭彦獣医師の意見を参考にしました。
「たんぱく質は加熱することで分子構造がゆるむ(変性)、消化しやすくなるという「事実」もあります。」
「たんぱく質は加熱すると消化しやすい」ということは、生肉は加熱した肉よりも消化に時間がかかるということ。
消化がゆっくりだと、肥満や糖尿病の原因となる血糖値の急上昇が抑えられるので、生活習慣病の予防も期待できます。

また生肉は50%以上が水分です。
そのため食事と同時に水分補給をできるメリットもあります。
生肉は時間をかけて消化されるので、肥満・超尿病の予防に効果的!
食事と一緒に水分も補給できます
メリットの次は、生肉のデメリットを見ていきましょう。
犬に生肉を与えるデメリット
生肉を与えることは、デメリットもいくつかあります。
生肉のデメリット
- 食中毒のリスクがある
- 生肉だけではカルシウム不足とリンの過剰摂取になる
- ドッグフードよりもコストがかかる
1つずつ見ていきましょう。
生肉は食中毒のリスクが高い

生肉の1番のデメリットは、食中毒のリスクがあること。
生肉には、食中毒の原因菌となる細菌や寄生虫が生息している可能性が非常に高いです。
そのため、生肉による食中毒を防ぐために下記の点に注意しましょう。
生肉による食中毒を防ぐには
●生肉を冷凍保存する
愛犬に与える前に、生肉は「-20℃以下で24時間以上」で冷凍保存しましょう。
冷凍することで、肉に生息する細菌を死滅させます。
●生食可能な肉を使用する
生食に慣れてくるとスーパーで加熱用に販売されている肉を与えても問題ないという意見もありますが、やはり生食可能と表示のある肉を与えるほうが安全。
愛犬にも安心して与えられます。
とくに子犬や高齢犬などは免疫力が落ちている場合もあるので、生食可能の表示がない肉は避けましょう。
●食材を洗う
真空パックや1食分ごとに個包装されている場合は必要ありませんが、大袋に入ったお肉を家庭で包み直したものは、冷凍で付いた霜を取り除くためにも使用する前に水で洗い流しましょう。
また冷凍肉は、常温で解凍してはいけません。
常温での解凍は、菌が増殖する危険性があります。
冷凍肉は前日から冷蔵庫で解凍するか、愛犬に与える直前に少量のお湯をかけてふやかす方法で解凍しましょう。
くわしくは、「生肉の与え方・お肉の量・解凍方法は?」の章でお話します。
生肉の与え方・お肉の量・解凍方法は?
生肉は食中毒の危険性が高い!
-20℃以下の冷凍庫内で24時間以上保存して、菌を死滅させましょう
生肉だけではカルシウム不足とリンの過剰摂取になる

愛犬に生肉を中心としながら、野菜や他の食材も与える食事内容であれば問題ありませんが、「生肉しか与えない!」といった偏った食スタイルはおすすめできません。
というのも、生肉だけでは犬の体に必要な栄養は摂取できないからです。
生肉だけの食事は、カルシウム不足とリンの過剰摂取に陥る危険性があります。
なお、カルシウムとリンは両方とも骨や歯の維持に欠かせない栄養素。そのため骨や歯の健康維持には、お互いのバランスが重要になります。
しかし生肉だけの食事では、カルシウムの摂取量が少なく、リンを必要以上に摂取する状態となります。
すると体内のカルシウムとリンのバランスが崩れて、骨がもろくなってしまうのです。
またリンの過剰摂取は、高齢犬に多い心臓病や腎臓病のリスクを高める危険性があります。
このことから生肉だけの食事は、愛犬の健康に悪影響です。
生肉を中心とした食事であれば問題ありませんが、生肉だけに限定した食事はやめましょう。
生肉だけの食事は、カルシウム不足とリンの過剰摂取を引き起こします
愛犬の健康のためには、生肉だけでなく野菜やほかの食材も与えましょう
生肉はドッグフードよりコストがかかる

生肉を中心とした食事は、お金がかかります。
コストがかかる主な理由は、「生食できる新鮮なお肉が必要なこと」や「生肉は水分が多く、ドッグフードよりも1日の給与量が多くなる」などです。
反対に最もコストパフォーマンスが良いのは、ドライタイプのドッグフードです。
ドライフードは重要あたりの栄養価が高く、少量で1日に必要なエネルギーを摂取できるメリットがあります。
ここまでの内容とおり、愛犬に生肉を与えることは良い点も悪い点もあります。
またもっとも重要なのは、愛犬が美味しそうに食べ、何を食べているときに体調が良いかということ。
今、愛犬にドッグフードを与えていて体の調子が良く、何も問題がなければ、生肉を無理に与える必要はありません。
犬も個体差があり、ドッグフードが体に合うワンちゃんもいれば、生肉のほうが調子が良くなるワンちゃんもいます。
ですから愛犬の体の調子や様子を見ながら、ご飯の内容を決めてあげましょう。
野生の犬や生肉を与える食事が、すべてのワンちゃんにとってベストな食事とは限りません
愛犬が喜んで食べて体の調子を整えてくれる、相性の良いご飯が愛犬のベストな食事です
とはいえ、「生肉も与えてみたいけど、実際にどうすれば良いのか分からない・・」という飼い主さんもいると思います。
次からは、生肉の与え方について見ていきましょう。
生肉の与え方・お肉の量・解凍方法は?

ここからは生肉の与え方について、「解凍」「お肉の量」「利用方法」の3つにポイントを置いてチェックしていきましょう。
生肉の与え方のポイント
- 解凍
- お肉の量
- 利用方法
●生肉の解凍方法
まず冷凍保存している生肉を解凍します。
冷蔵庫で解凍する場合は、与える前日に冷蔵庫へ移しましょう。
なお、常温で解凍しないこと。
常温での解凍は、菌が繁殖する危険性があります。
またパックに包まれているものなら湯煎で解凍するのもOK。冷凍したお肉に少量のお湯をかけて、ふやかしてから与えるのもおすすめです。
なお、愛犬にキンキンに冷えたお肉を与えるのはやめましょう。冷たすぎる食事は体に負担がかかり、お腹の弱い子犬や高齢犬は下痢を起こす場合もあります。
少量のお湯をかけて、犬の体温くらい(38℃前後)にほんのり温かくしてから与えると、お腹に余計な負担がかからないのでおすすめです。
それから、電子レンジを利用するのも良いですが、温めすぎると熱に弱い栄養素や酵素が壊されてしまうので、数秒温めてこまめに様子を確認しましょう。
●お肉の量
商品に愛犬の体重ごとの給与量が表示されていれば参考にできますが、とくに給与量の指定がない場合はどのくらい与えればいいか迷いますよね。
そんなときに使えるのが、「給与量簡単シュミレーター」
愛犬の年齢(健康状態)と体重を設定すると、愛犬の1日に必要なカロリーが計算されます。
そのカロリーをもとに、生肉(種類も選べる!)の1日の量を自動で計算してくれます。
この計算表を利用すれば、愛犬にどのくらいの量を与えて良いのか簡単に計算できるので、ぜひ参考にしてください。
なお、この計算表はあくまで目安です。
はじめは計算表の分量を与え、その後は愛犬の体重などを確認しながら、愛犬のベストな肉の量に調整していきましょう。
●利用方法
生肉をメインとして与える方法から、ドッグフードのトッピングとして利用する方法など、生肉の利用方法は飼い主さんや愛犬に合わせて変えられます。
ですから、「今ドッグフードを与えているけど、生肉も気になる・・」という場合は、ドッグフードのトッピングから生肉を始めてみるのもおすすめです。
生肉の利用方法
・生肉を中心とした食事
・ドッグフードと1対1の割合で混ぜる
・ドッグフードのトッピングに生肉を加える
なお、先ほどご紹介した「給与量簡単シュミレーター」では、ドッグフードのトッピングに生肉を私用する場合の計算表もあります。
ドッグフードの20%の分量を生肉で補う場合の計算表となっているので、トッピングに生肉を私用する場合も簡単に肉の量が計算できます。
下痢にならない!生肉の与え方

「愛犬に生肉を与えたら下痢になった・・」
ドキドキしながら愛犬に生肉を与えてみた翌日、愛犬がお腹を壊して下痢になってしまった・・なんてことはありませんか?
新しいドッグフードに切り替えるときも同じですが、犬は食事内容が変わるだけでストレスを感じるデリケートな面があります。
とくに今までドッグフードを食べていた場合、急に生肉を与えると体が対応しきれず下痢になる場合があります。
また、【生肉の解凍方法】のところでもお話しましたが、子犬や高齢犬は冷たいお肉に体が冷えてお腹を壊す場合もあるので注意が必要です。
そのため、愛犬に生肉を与える場合は肉の温度と与える量に注意しましょう。
初めて愛犬に生肉を与える場合は、小さじ1杯から始めます。
生肉を与えてみて愛犬の体に変わった様子がなければ、少しずつ量を増やしていきましょう。
ドッグフードから生肉に完全に切り替える目安は、10日~2周間程度。ゆっくり時間をかけて体に慣れさせましょう。
食事内容の急な変更は、愛犬がストレスを感じたり、消化不良による下痢を起こす原因です
初めての生肉は、馬肉がおすすめ!

また愛犬に初めて生肉を与えるなら、馬肉がおすすめです。馬肉は他の動物より菌の生息数が少なく、人も生食が認められています。
さらに馬肉は高タンパク低脂肪なヘルシーなお肉。貧血を予防する鉄分、老化や病気要望に効果的なセレンも豊富に含まれています。
馬肉以外では、ラム肉もおすすめです。
全般的に肉には、100gあたりリンが200mg前後含まれていますが、ラム肉(ロース)のリンの量はその半分の100mg。
心臓病や腎臓病のリスクを高めるリンの摂取を抑えることができます。
また好き嫌いの多いワンちゃんには、食べ慣れている鶏肉から始めるのもOK。
市販のドッグフードの多くは原材料に鶏肉が使用されているので、偏食傾向のある愛犬も警戒せずに食べてくれるかもしれません。
なお、豚肉はお肉の中でも菌が多いとされていますが、生食用にきちんと管理された豚肉であれば与えて問題ありません。
ただ、スーパーで販売されている加熱用の豚肉を与えるのは絶対やめましょう。
さらに詳しく
まとめ
生肉の与え方と注意点について、おわかりいただけたでしょうか。
生肉を与える食事は、生肉のメリットとデメリットの両方を理解することが大切です。
また、生肉を与える食事も、生肉を与えない食事もどちらも正解です。
愛犬の体調や食の好みなどを考慮したうえで、愛犬に生肉を与えたほうが良いか判断しましょう。
参考サイト:自然食の種類
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