鶏肉がおすすめのワンちゃん
寒がり、皮膚の炎症、被毛のパサつき、成長期の子犬
お腹の弱いワンちゃん、高齢のワンちゃん
ドッグフードに使用されるお肉といえば鶏肉や牛肉が一般的でしたが、最近はラム肉や鹿肉、馬肉など色々な種類の肉をメイン使用したドッグフードが増えています。
ドッグフードのバリエーションが増えるのは愛犬や飼い主さんにとって嬉しいことですが、種類が多くなると今度はどのお肉のフードを選べばいいか迷ってしまいますよね。
そこで、それぞれのお肉に含まれる栄養成分を比較してみました。またお肉の種類ごとに相性の良いワンちゃんもご紹介していますので、ぜひフード選びの参考にしてください。
目 次
お肉に含まれる栄養成分をチェックする前に、愛犬が1番好きな肉の種類はどれか知っていますか?
じつはアメリカのコーネル大学獣医学部が犬の味覚について研究した結果では、ワンちゃんが最も好きなお肉は牛肉だとされています。
牛肉の次に好きなのが豚肉。それ以降は3位ラム肉(羊肉)、4位鶏肉、5位馬肉だとされています。
牛肉>豚肉>ラム(羊肉)>鶏肉>馬肉
多くのドッグフードに使用されている鶏肉が4番目とは意外です。しかし鶏肉の順位が低かった理由は犬の味覚が関係しています。
犬の味覚は、脂肪酸と呼ばれる油の成分を好む傾向があります。そのため脂質の少ない鶏肉より脂質が多く含まれる牛肉や豚肉、ラム肉に良い反応を示したのです。
とはいえ、この研究結果はあくまで犬の味覚の傾向をあらわしているだけ。牛肉よりも鶏肉が好きなワンちゃんもいれば、馬肉が大好物のワンちゃんもいるので参考にする程度で十分です。
たとえば、ドッグフード変更したら愛犬が食べなくなった場合などは、そのフードに使用されているお肉が好みではないケースも考えられます。そんなときは、上記の肉の順位を参考にフードを選ぶのも良いでしょう。
どんなに栄養がたっぷりでも愛犬が食べないと意味がないので、愛犬が毎日喜んで食べてくれるドッグフードを選ぶことが大切です。
そのためにも鶏肉や牛肉、鹿肉など、お肉それぞれの特徴を知っておきましょう。
ドッグフードには鶏肉や牛肉、豚肉、鹿肉(ベニソン)、羊肉(ラム)、馬肉などの色々な種類のお肉が使用されています。
じつはこれらのお肉はすべて、「体を温める肉」と「体を冷やす肉」、そのどちらにも当てはまらない「中間」のいずれか3つの性質があります。
体を温める作用がある肉は、鶏肉、七面鳥(ターキー)、ラム(羊肉)、ベニソン(鹿肉)、ヤギ、カンガルー、イノシシなど。
反対に体を冷やす作用があるのは馬肉やウサギの肉で、そのどちらにも当てはまらないものが牛肉と豚肉、ダック(鴨肉)です。
このような肉が持つ性質と次の章で説明する肉の栄養成分を知っておくと、愛犬の体調や活動量などによってどのお肉が良いか分かるため、ドッグフードも選びやすくなります。
それでは鶏肉・牛肉・鹿肉・ラム肉・馬肉・豚肉に含まれる栄養成分について、鶏肉から確認していきましょう。
お肉の種類のなかでもドッグフードの原材料に最もよく使用されているのが、鶏肉です。どのような特徴があるのか、栄養面について詳しく見ていきましょう。
鶏肉に含まれる主な栄養成分は下記のとおりです。
鶏肉(鶏もも肉)
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 200kcal |
タンパク質 | 16.2g |
脂質 | 14g |
ビタミンA | 39ug |
ビタミンK | 53ug |
パントテン酸 | 1.68mg |
ナトリウム | 59mg |
カルシウム | 5mg |
リン | 160mg |
マグネシウム | 19mg |
オメガ6 | 1.73g |
オメガ3 | 0.09g |
鶏肉の最大の特徴は、高タンパク低脂肪であること。
なお100gあたりに含まれるタンパク質の量は、牛肉と豚肉が約14gに対して鶏肉は約16とほとんど差はありません。
一方、脂質は牛肉と豚肉が約33gに対して、鶏肉はその半分以下の14gだけ。ほぼ同量のタンパク質が摂取できるのに、脂質は半分以下に抑えられるヘルシーなお肉です。
また鶏肉は体を温める作用がありますが、とくに胃腸を温めて消化機能を促す働きがあります。そのため他のお肉よりも消化吸収されやすくお腹にやさしいのもポイント。
さらにエネルギーの代謝をサポートするナイアシンやパントテン酸の量も多いので、摂取した分が効率よくエネルギーとして消費されます。
なおパントテン酸は、ストレスに対抗するホルモン(副腎皮質ホルモン)やウイルスに対抗する免疫物質の分泌、薬物の解毒作用にも関わります。
ほかにも鶏肉はビタミンAやビタミンK、オメガ6も豊富。
ビタミンAは視覚や皮膚、毛、粘膜、歯の健康に関わり、ビタミンKは傷口の出血を止めたり丈夫な骨づくりに必要な成分です。
またオメガ6は皮膚や毛並みの健康維持に欠かせない必須脂肪酸の1つ。皮膚の水分量を調節する働きによって、皮膚の炎症や毛並みのパサつきを予防・改善する効果が期待できます。
鶏肉がおすすめのワンちゃん
寒がり、皮膚の炎症、被毛のパサつき、成長期の子犬
お腹の弱いワンちゃん、高齢のワンちゃん
鶏のささみをドッグフードのトッピングや、愛犬のおやつに利用している飼い主さんも多いと思います。
しかし愛犬にささみを与える場合は少し注意が必要なポイントがあります。どのような注意点があるのか、栄養成分から見ていきましょう。
鶏のささみ
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 105kcal |
タンパク質 | 23g |
脂質 | 0.8g |
ナトリウム | 33mg |
カルシウム | 3mg |
リン | 220mg |
マグネシウム | 31mg |
表のとおり、鶏肉のなかでもささみは脂質がほとんど含まれていない、高タンパク低脂肪の部位です。
ただし、ささみは他のお肉と比べてリンの量が多いことが難点。
リンの過剰摂取は、高齢のワンちゃんに多い腎臓病や心臓病の発症や進行を早める危険性があります。
そのため愛犬が10才以上の高齢の場合は、ささみを与えすぎないように注意が必要。
フードのトッピングとおやつの両方にささみを使用している場合は、トッピングをささみよりのリンの量が少ない鶏肉に変えるなど、リンを過剰摂取させないように注意しましょう。
また10才以下のワンちゃんも、ご飯代わりにささみチップを大量に与えるのも良くありません。
ささみに多く含まれているリンは、カルシウムと協力ながら骨や歯を強くする働きがあります。
しかし毎日ささみばかりを与えていると、血中のリン濃度が高くなりすぎてカルシウムとのバランスが崩れてしまいます。
するとカルシウムはリンとのバランスを取るために、骨や歯に含まれるカルシウムを血液へ放出。その結果、骨や歯がもろくなってしまうのです。
このことから、ささみチップを与える場合は必ず指定されている給与量を守ること。けっしてご飯代わりに使用してはいけません。
ささみは高タンパク低脂肪
しかしリンの量が多いので与え過ぎに注意!
高齢のワンちゃんはささみよりも胸肉のほうが安心
ワンちゃんが最も好きなお肉といわれる牛肉は、高カロリー・高タンパク・高脂質で栄養がぎっしり含まれています。
それでは、牛肉に含まれる主な栄養成分を見ていきましょう。
牛肉(牛バラ肉)
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 371kcal |
タンパク質 | 14.4g |
脂質 | 32.9g |
ビタミンB12 | 1.3ug |
ビタミンE | 1.1mg |
ナトリウム | 52mg |
カルシウム | 4mg |
リン | 130mg |
マグネシウム | 14mg |
鉄 | 1.5mg |
亜鉛 | 3mg |
今回比較している6種類の肉(鶏肉・牛肉・鹿肉・ラム肉・馬肉・豚肉)のなかで、牛肉のカロリーの高さは断トツ。
牛肉100gあたりのカロリーは371kcal。この値は100gあたり110kcalの鹿肉や馬肉の3倍以上です。
カロリーが高いと太るイメージがあるかもしれませんが、少しの量でエネルギーを効率よく補える良い面もあります。
そのため成長期の子犬や妊娠・授乳中の母犬、活動量の多い大型犬、食欲の落ちた高齢のワンちゃんなどにおすすめです。
また牛肉は鉄分や亜鉛、ビタミン12、ビタミンEも豊富に含まれています。
まず鉄分は酸素を全身に運ぶ赤血球のもとになる成分。
そのため鉄分が不足すると、血液が十分につくられないため貧血を起こしたり、全身に酸素が十分運ばれないため疲れやすく、食欲不振を引き起こす場合もあります。
亜鉛は味覚を正常に保つ働きがあり、不足すると味覚障害を引き起こします。
また免疫反応にも関わっているため、不足すると免疫力が落ちて皮膚炎を起こしやすくなります。皮膚や毛並みの健康維持には欠かせない栄養素です。
ビタミンB12はタンパク質のもととなるアミノ酸や脂質の代謝を助けます。
鉄分と同じく赤血球を作りだす働きに関わっているため、不足すると貧血や手足のしびれなどの神経障害を引き起こす危険性があります。
また人では認知症患者の脳内のビタミンB12濃度が低いことが確認されており、脳の働きにも関わっていると考えられています。
牛肉がおすすめのワンちゃん
成長期の子犬、妊娠・授乳中の母犬、活動量の多い大型犬
貧血、食欲のないワンちゃん
鹿肉(ベニソン)は鶏肉や牛肉アレルギーのワンちゃんに対応した、低アレルゲンのドッグフードのメイン食材としてよく使用されています。
鹿肉に含まれる主な栄養成分は下記のとおりです。
鹿肉(ベニソン)
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 110kcal |
タンパク質 | 22.3g |
脂質 | 1.5g |
ビタミンB2 | 0.35mg |
ビタミンB6 | 0.54mg |
ナトリウム | 58mg |
カルシウム | 4mg |
リン | 200mg |
マグネシウム | 26mg |
鉄 | 3.1mg |
亜鉛 | 3.1mg |
鹿肉は高タンパク・低脂肪・低カロリーのヘルシーなお肉。そのため同じく高タンパク低脂肪の鶏肉が、アレルギーなどで食べられないワンちゃんや肥満気味のワンちゃんにもおすすめです。
ほかにも鹿肉にはビタミンB2やビタミンB6、鉄、亜鉛が豊富に含まれています。
ビタミンB2は3大栄養素の脂質・糖質・タンパク質の分解とエネルギーとして消費されるのを助ける役割があります。
そのためビタミンB2は活動量の多いワンちゃんほど必要。たくさんの運動量が必要な大型犬や遊ぶのが大好きな活発なワンちゃんにも鹿肉はぴったりです。
またビタミンB2は「発育のビタミン」とも呼ばれ、成長促進や皮膚・毛・つめの細胞の再生に働きかけます。
さらに脂質の酸化によって発生する有害な過酸化脂質を分解する働きもある、優秀な栄養素。
細胞の再生に必要なため、不足すると口まわりや歯茎、皮膚に炎症が起きたり、目が充血するなどの症状があらわれます。
一方、ビタミンB6は摂取したタンパク質を分解して、そのタンパク質を体内に取り込むサポートをします。そのためタンパク質を多く摂取するほどビタミンB6が必要。
また不足すると目や鼻、口、耳の周囲に湿疹ができたり、貧血、けいれんなどの神経異常を引き起こす恐れがあります。
鹿肉がおすすめのワンちゃん
肥満、高齢犬、運動量の多い大型犬
貧血ぎみ、目や口、鼻などの粘膜が荒れているワンちゃん
ラム肉も鹿肉と同じく、鶏肉や牛肉アレルギーの対応食材として使用されています。
ラム肉に含まれる主な栄養成分を見ていきましょう。
ラム肉/羊肉(ロース)
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 227kcal |
タンパク質 | 18g |
脂質 | 16g |
ビタミンB12 | 1.1ug |
ナトリウム | 55mg |
カルシウム | 3mg |
リン | 100mg |
マグネシウム | 16mg |
鉄 | 1.5mg |
亜鉛 | 2.6mg |
オメガ6 | 0.56g |
オメガ3 | 0.2g |
ラム肉の栄養バランスは、高タンパク高脂肪の牛肉と高タンパク低脂肪の鶏肉のちょうど中間。タンパク質と脂質の両方とも適度に含まれている栄養バランスの良いお肉です。
またラム肉の最大の特徴は、カルニチンが豊富に含まれていること。
カルニチンとはビタミンと似た働きを持つ物質(ビタミン様物質)の1つで、脂肪をエネルギーに効率よく変える働きがありダイエット効果が期待されている成分です。
とくにラム肉はお肉の中でもカルニチンの量が多く、体重管理が必要なぽっちゃり気味のワンちゃんには特におすすめです。
ほかにもラム肉は、腎臓病や心臓病のリスクを高めるリンの量が少ないことも魅力。
これらの病気は高齢になるほど発症リスクが高まるので、リンの摂取量を減らしたい場合はラム肉を使用したフードやおやつを選びましょう。
またお肉の中では、魚の油に豊富な抗炎症作用のオメガ3も少し含まれています。
ラム肉がおすすめのワンちゃん
肥満犬、体重管理が必要なワンちゃん、高齢犬
鹿肉やラム肉に続き、ドッグフードの主原料として新たに注目されているのが馬肉。1900年代のアメリカでは馬肉を使用したドッグフードが大流行していた歴史もあり、気になる食材です。
それでは馬肉に含まれる主な栄養成分を見ていきましょう。
馬肉
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 110kcal |
タンパク質 | 20.1g |
脂質 | 2.5g |
ビタミンE | 0.9ug |
ナトリウム | 50mg |
カルシウム | 11mg |
リン | 170mg |
マグネシウム | 18mg |
鉄 | 4.3mg |
亜鉛 | 2.8mg |
セレン | 17ugg |
馬肉は鶏のささみ・鹿肉に続いて、高タンパク低脂肪のヘルシーなお肉。鶏アレルギーのワンちゃんやぽっちゃり体型のワンちゃんにも安心な食材です。
なお、お肉は全体的にカルシウム量が100gあたり4%前後と少ないのですが、馬肉のカルシウム量は11gと他のお肉よりも多いのも高ポイント。
さらに鉄分の多さは100gあたり4.3gと断トツの多さです。
鉄分は酸素を全身に運ぶ赤血球のもととなる成分なので、貧血ぎみのワンちゃんに馬肉は特におすすめ。
また全身に酸素が十分に行き渡らないと疲れやすくなるので、最近愛犬がすぐバテてる・歩かなくなった場合も馬肉の摂取はおすすめです。
ただ馬肉は体を冷やす作用があるため、寒がりのワンちゃんに与える場合は注意が必要。愛犬が寒がりの場合は、体を温める作用のある鶏肉やラム肉、鹿肉と一緒に与えましょう。
ほかにも馬肉には、油の酸化によって発生する有害な過酸化脂質を分解するセレンも多く含まれています。
このことからセレンは「細胞のサビを防ぐミネラル」として、病気や老化の予防効果が期待されています。
とくに体の機能が低下していく高齢のワンちゃんに積極的に摂取してほしい成分です。
馬肉がおすすめのワンちゃん
肥肥満犬、高齢のワンちゃん
貧血、体力のない・すぐ疲れるワンちゃん
豚肉はドッグフードの主原料には使用が少ないですが、ポークオイルやポークエキスなどとしてよく使用されている食材です。
使用される部位によって栄養バランスに差はありますが、今回は豚もも肉の栄養成分についてチェックしていきましょう。
豚肉(豚もも肉)
主な栄養素 | 含有量 (100gあたり) |
---|---|
カロリー | 183kca |
タンパク質 | 20.5g |
脂質 | 10.2g |
ビタミンB1 | 0.9mg |
ビタミンB2 | 0.21mg |
ナトリウム | 47mg |
カルシウム | 4mg |
リン | 200mg |
マグネシウム | 24mg |
鉄 | 0.7mg |
亜鉛 | 2mg |
豚肉の最大のポイントは、ビタミンB群が豊富なこと。ビタミンB1・B2・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸といったビタミンB群がたっぷり含まれています。
なかでもビタミンB1の量は、他のお肉と比べても断トツの多さです。
牛肉や鶏肉に含まれるビタミンB1の量が100gあたり0.05~0.07mgに対して、豚肉に含まれるビタミンB1の量は0.9mg。牛肉や鶏肉の12~18倍も多く含まれているのです。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えたり、疲れのもとになる乳酸が体内に溜まるのを防ぐ働きがあります。
そのため運動量の多い大型犬や活発なワンちゃんに特におすすめ。
また夏バテ予防にもビタミンB1の摂取は有効なので、愛犬が暑いのが苦手な場合は夏だけ豚肉をドッグフードのトッピングにプラスするのもおすすめです。
豚肉がおすすめのワンちゃん
活動量の多い大型犬、活発なワンちゃん
夏の暑さが苦手なワンちゃん
以上が、それぞれのお肉に含まれる栄養成分の特徴です。
ドッグフードやジャーキーを選ぶときは、愛犬の健康状態や生活スタイルに合わせながら、ぜひ上記の栄養成分のポイントを参考にしてみてください。
以前までドッグフードに使用されるお肉は鶏肉と牛肉だけでしたが、今は鹿肉やラム肉、馬肉など、さまざまな種類のお肉が使用されています。
そのぶん愛犬の食事のバリエーションも増えるので、よりベストなものを選んであげたいですね。
なお記事の内容のとおり、お肉の種類によって含まれている栄養成分や相性の良いワンちゃんはちがいます。
ただ1番大切なことは愛犬が喜んで食べてくれることなので、愛犬がおいしそうに食べているか確認しながら相性の良いお肉を試してみましょう。
おすすめドッグフード目的別ランキング