ペットフード安全法の目的
- ドッグフードの安全性の確保
- ペットの健康の保護
- 動物の愛護に貢献
ワンちゃんを飼っているほとんどの人が、愛犬に安全なドッグフードを食べさせてあげたいと思っているはず。
ところがドッグフードは安全性に関する法律が無いまま、長い間取り扱われていたって知っていますか?
その後2009年にドッグフードの安全に関する法律(ペットフード安全法)が施行されますが、この法律はワンちゃんやネコちゃんが犠牲になる悲しい事件がきっかけでつくられたのです。
それではドッグフードに関してどのような法律があるのか、またドッグフードは法のもと安全に守られているのか、ペットフード安全法のきっかけになった事件とあわせて確認していきましょう。
目 次
ドッグフードに関する法律は主に7つあります。
ドッグフード(ペットフード)に関する法律
以上7つの中で、ドッグフードの安全性に関わる法律は①ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)です。
ペットフード安全法では、フードの安全を守るために下記の3点を目的としています。
ペットフード安全法の目的
ペットフード安全法ではドッグフードはワンちゃんが毎日食べるため、安全性がしっかり守られていることが大前提とされています。
またワンちゃんの体はドッグフードに含まれる栄養をもとつくられます。そのためワンちゃんの健康に役立つものでなければならず、けっしてワンちゃんに悪影響を与えるようなことがあってはいけません。
ペットフード安全法では以上のことを目的としてフードの安全を守っています。そのため私たちが愛犬に与えているフードは、ペットフード安全法のもと安全が確保されているのです。
ただペットフード安全法が施行されたのは2009年6月1日(環境省・農林水産省共管)。それ以前はペットフードの安全性に対して、きちんとした法律は何もありませんでした。
その理由はワンちゃんやネコちゃんなどのペットは人の体に影響しないから。単純にいうと人が食べないからです。
ワンちゃんやネコちゃんは牛や豚、鶏などの家畜とはちがい、人が食べることはありません。
そのため人の体に影響を与える可能性がないことから、ペットの健康に対する意識が低くペットフードの安全性に関する法律もなかったのです。
ちなみにペットと同じ動物でも牛や豚、鶏などの家畜は人が食べるため、エサや残留農薬に関して安全基準がきっちり定められています。
家畜が危険なエサを食べると、その家畜の肉を食べた人の体に悪影響が及ぶ恐れがあるという考えから、家畜の健康を守るように対応されているのです。
なお日本のペットフードに対する考え方は、ヨーロッパやアメリカでは時代遅れ。ペットフード先進国のヨーロッパやアメリカでは、ペットフードは家畜の飼料や食品と同等に扱われています。
しかし日本はペットフード安全法が施行されるまで、法律上は人が食べないからペットフードの安全性は後回しという状態だったのです。
2009年、ようやくドッグフードやキャットフードの安全性を確保する「ペットフード安全法」が施行されます。
しかしペットフード安全法の設立には、多くのワンちゃんやネコちゃんが犠牲になった悲しい事件がきっかけになっていたのです。
ペットフード安全法が設立されるきっかけとなったのは、2007年にアメリカで数百件以上も発生したペットの健康被害です。
中国産のペットフードに有害物質メラミンが混入していたことが原因で、それらのフードを食べた多くのペットが体調不良に陥り、数百匹のワンちゃんやネコちゃんが腎不全により命を落とす大事件が起きたのです。
フードの販売元であるカナダの大手ペットフードメーカー「メニュー・フーズ」は、相次ぐペットの体調不良の報告を受け、ドッグフード50品目・キャットフード40品目の大量リコールを発表しました。
事件発生後のFDA(米国食品医薬品庁)やUSDA(米国農務省)の調査の結果、健康被害を引き起こした原因はフードの原料に使用されていた中国産の小麦粉だと判明。
フードの原料に使用された中国産の小麦粉には、有害物質のメラミンやシアヌル酸などのメラミン関連化合物が含まれていたのです。
さらにAVMA(米国獣医師会)による発表では、リコール対象のフードを食べたワンちゃんやネコちゃんの体を解剖した結果、メラミンとシアヌル酸の化学反応によってできた結晶が腎臓の働きを阻害し、腎不全を引き起こした可能性があるとされています。
本来は健康をサポートする役目のペットフードが、ワンちゃんやネコちゃんに害を与え、命までも奪った悲しい事件がほんの数年前に実際にあったのです。
じつは事件が発生した当時、日本でもリコールの対象となったフードは販売されていました。
しかし日本では販売業者が問題のフードを自主回収する迅速な対応を取ったため、国内のワンちゃんやネコちゃんが被害を受けることはありませんでした。
さらに日本はこの事件が起きたことで、ペットフードの安全性に関する法律がないことにようやく危機感を覚えるようになったのです。
そして事件発生から2年後の2009年、ペットフードの安全性を確保する法律「ペットフード安全法」がやっと施行されたのです。
【環境省】ペットフード安全法のあらまし
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2706l/pdf/full.pdf
【農林水産省】ペットフード安全法が施行されました!
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/pdf/leaflet1.pdf
では悲しい事件をきっかけに誕生したペットフード安全法は、どのようにフードの安全を守っているのか詳しく見ていきましょう。
まずはペットフード安全法の対象となるものからチェックします。
ペットフード安全法はペットフードの安全を確保することを目的とした法律ですが、すべてのペットが対象ではありません。
ペットフード安全法の対象となる動物は、ワンちゃんとネコちゃんだけ。ペットとして飼育されることの多いハムスターやウサギ、鳥、熱帯魚などの動物は対象外です。
犬猫以外の動物が対象でない理由は、現在はペットは家族の大切な一員として人と同じ程度に扱われる存在になりましたが、ほんの数十年前まではペットは人よりも低く扱われることが当たり前の時代でした。
そのため、まずはペットに多いワンちゃんとネコちゃんだけを対象にして、そのあと様子を見ながら他のペットも対象の動物に加えていこうと考えられたのです。
またワンちゃんやネコちゃんに関係するものでも、すべてが対象になるわけではありません。
ペットフード安全法の対象となるものは、ワンちゃんやネコちゃんが主食として食べている総合栄養食と呼ばれるフード、ジャーキーやボーロのようなおやつ、ガム、サプリメント、ペット用ミネラルウォーターなど。
一方、ペットフード安全法はフードの安全性やワンちゃんやネコちゃんの健康を守ることが目的なので、おもちゃやフードの容器、薬などの医薬品は対象外です。
以上のことからペットフード安全法と対象となるものは、ワンちゃんやネコちゃんが毎日食べるフードやおやつだけなのです。
続いて、ペットフード安全法はどのような基準や体制でフードの安全を守っているのか見ていきましょう。
ペットフードの先進国であるドイツやイギリス、アメリカなどに比べると、日本はまだまだ発展途中。
その証拠に市販のフード割合は、国産よりも海外産の輸入フードほうが圧倒的に多いのが現状です。
もちろんペットフード安全法は、原産国に関係なく日本に流通するすべてのドッグフードとキャットフードを対象としています。
国はペットフードの安全を守るため基準や規格を設け、国内に流通するフードを監視。基準や規制に違反するフードは廃棄や回収命令を出して、国内に流通しないようにしています。
具体的には下記のような対策が取られています。
ペットフード安全法による国のはたらき
なお国が監視する対象は、フードに直接関わる事業者です。その事業者とは国内でフードを製造する製造業者、海外のフードを輸入する輸入業者、市場にフードを販売する販売業者の3つ。
これら3つの事業者はフードの安全を守る重要な責任があるとして、国による監視以外に下記3つの責務も定められています。
ペットフード安全法による事業者(フードの製造・輸入・販売)の責務
フードの安全を守るには、フードの原材料や製造方法、輸送時の環境、保管場所の倉庫の状況など、さまざまな場面で考えられるリスクを回避・予防しなければいけません。
フードの安全を守るために注意すべきことや対策などの知識、それを実行できる技術が必要です。
またフードに使用される原材料の安全確保も欠かせません。万が一、フードがペットの健康に悪影響を与える可能性が考えられる場合は、速やかに対処する責任もあります。
このようにペットフード安全法は、フードに関わる製造・輸入・販売業者に上記の責任と義務を課してフードの安全確保に努めています。
その他にもフードの安全を守るため、ペットフード安全法では製造基準や表示基準、フードの成分規格についても設定しています。
まず製造基準では、下記の3点を規制しています。
ペットフード安全法の製造基準
ペットフード安全法の目的は、フードの安全確保とペットの健康保護です。そのためペットの体に悪影響を及ぼす有害物質や病原菌・ウイルスを含んだ原材料の使用が禁止されています。
またフードの製造時に加熱や乾燥工程がある場合は、病原菌の繁殖防止に努めること。菌の繁殖防止にはドライフードやウェットフードなどの種類ごとに対応する必要があります。
3つ目の製造基準は猫用フードだけの基準です。猫用フードへの使用が禁止されているプロピレングリコールとは、フードの食感を良くする添加物(保湿剤)の1つ。
プロピレングリコールをワンちゃんが摂取しても問題ありませんが、ネコちゃんが摂取すると赤血球に異常を引き起こすため、猫用フードのみ使用が禁止されています。
製造基準は以上の3点で、その他の添加物や残留農薬に対する基準は、成分規格として基準が設定されています。
引き続き見ていきましょう。
猫用フードに禁止されているプロピレングリコール以外の添加物や残留農薬に対する基準は、成分規格として下記の内容で規制されています。
ペットフード安全法の成分規格
分類 | 物質等 | 上限値(μg/g) |
---|---|---|
添加物 | エトキシキン BHA・BHT | 合計:150 犬用はエトキシキン 75μg/g以下 |
亜硝酸ナトリウム | 100 | |
農薬 | グリホサート | 15 |
クロルピリホスメチル | 10 | |
ピリミホスメチル | 2 | |
マラチオン | 10 | |
メタミドホス | 0.2 | |
かび毒 | アフラトキシンB1 | 0.02 |
デオキシニバレノール | 犬用:2 猫用:1 |
|
重金属など | カドミウム | 1 |
鉛 | 3 | |
ヒ素 | 15 | |
有機塩素系化合物 | BHC | 0.01 ※α、β、γおよびδの合計量 |
DDT | 0.1 ※DDDおよびDDE含む |
|
アルドリン ディルドリン | 合計:0.01 | |
エンドリン | 0.01 | |
ヘプタクロル ヘプタクロルエポキシド | 合計:0.01 | |
その他 | メラミン | 2.5 |
※上限値は水分量10%の場合
上記の上限値は、科学的なデータやペットフード先進国であるヨーロッパやアメリカの基準をもとに設定されています。
そのため上記の基準内での農薬や汚染物質、添加物などが、ワンちゃんの体に悪影響を与える恐れはないと考えられています。
ただし私たちが食べる食品基準と比べると、農薬や添加物の基準に少し不安な点があるのです。
たとえばエトキシキンやマラチオンなどの農薬は、私たちが食べる食品よりも上限値が高く設定されています。またフードの酸化防止に使用されるエトキシキンは、食品への使用が禁止されている添加物です。
基準の範囲内であればペットの健康に影響はないとされていますが、私たちよりも体の小さなワンちゃんが毎日食べるため、人より厳しい基準でも良いのではと少し違和感を覚えます。
そのため私は添加物不使用、もしくは添加物の使用を最低限に留めているフードを選ぶようにしています。
またペットフード安全法が定める表示基準では、フードのパッケージに「名称」「原材料名」「賞味期限」「原産国」「事業者名および住所」の5項目の表示を義務付けています。
ペットフード安全法では名称に「ドッグフード」や「猫用フード」など、ワンちゃんとネコちゃんのどちらに対応したフードであるか、はっきり示す必要があります。
またフードの製造に使用される原材料は、すべて表示しなければいけません。表示される順番は原材料に対する割合が高いものからです。
フードの賞味期限は年月日もしくは年月で表示。海外のフードの中には賞味期限の表示が逆から(日月年など)印字の場合もあるので注意しましょう。
続いて原産国は、加熱工程や練り加工などのフードの本質工程をおこなった最終の国です。フードの製造そのものに関係しない箱詰め作業などをおこなった場所は原産国として認められていません。
以上の5項目がパッケージに表示されていないフードは、ペットフード安全法に違反しています。安全性が保証されていないので絶対購入しないこと、愛犬に与えてはいけません。
以上が、ペットフード安全法による国や事業者のはたらきと、フードの安全確保に関わる基準です。
続いて、ペットフード安全法で義務付けされているその他の内容を見ていきましょう。
ペットフード安全法では製造業者と輸入業者に対して、フードの製造・輸入をおこなう際の事前の届け出を義務づけています。
またフードを取り扱う事業者は、製造・輸入・販売の記録を帳簿に記す必要があります(小売は対象外)。
一方、国は事業者への立入検査や帳簿の公開を求めることが可能。立入検査は製造業者、輸入業者、販売業者だけでなく、運送業者や保管倉庫などフードが関係する場所が対象とされています。
【農林水産省】ペットフードの安全確保のために
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/attach/pdf/index-5.pdf
このようにペットフード安全法は、国の監視体制やフードに関わる事業者へ細かく対策をおこなうことで、国内に流通するフードの安全性を保つように働きかけています。
さいごに、ペットフード安全法以外のフードに関する法律について簡単にチェックしましょう。
記事のはじめに一覧で紹介しましたが、フードに関係する主な法律はペットフード安全法を含めて7つあります。
ドッグフード(ペットフード)に関する法律
この中でペットフード安全法以外に、特に私たちに関係のある法律は②医薬品医療機器等法と③動愛法です。
それぞれの内容を簡単に見ていきましょう。
医薬品医療機器等法は、ペットフードの表示・広告に対して医薬品的な表現を禁止する法律。ペットフードは薬ではないので、医薬品的な効能や効果を表示してはいけません。
× ・・ 心臓病を予防するフード
○ ・・ 体の負担に配慮したナトリウム控えめのフード
健康や病気に配慮したフードはありますが、そのフードだけで病気は治りません。過剰な表現には注意しましょう。
動愛法は動物愛護と管理に関する法律です。
動物の販売業者は購入者に対して、適切な飼育方法(食事や運動など)を伝え、理解させる義務があります。
また動物の取り扱い業者は、動物の種類や発育状況、健康状態などの飼育環境に応じて、適切な食事や給水をおこなう必要があります。
以上がペットフードに関わる主な法律です。
ペットフード安全法により国内に流通するフードはすべて、最低限のラインは安全性が確保されています。
ただペットフード安全法の対象動物は、施行された2009年から変わらずワンちゃんとネコちゃんだけ。日本はペットに関する対応がまだまだ遅れているのが現状です。
また法律で最低ラインの安全が保証されているとはいえ、ワンちゃんは毎日同じフードを食べ続けるため、その中でもより安全・安心できるフードを選んでいきたいのが飼い主さんの思いです。
ワンちゃんに良いフードは年齢や体調によって変わるため、愛犬の健康状態に合わせながらベストなフードを選んであげましょう。
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