AAFCOのタンパク質の基準値
- 幼犬:22.5%以上
- 成犬:18.0%以上
ドッグフードを選ぶとき、フードに含まれる栄養バランスをチェックする飼い主さんも多いはず。
ところが、いざパッケージの表示を確認すると、タンパク質20%・脂質7%のフードやタンパク質36%・脂質19%のフードなど、種類によって栄養バランスがちがうことに戸惑った経験はありませんか?
メーカーや種類がちがうとはいえ、ドッグフードに含まれる栄養バランスに大きな差があるなんて…。いったい、ドッグフードに含まれる栄養はどのような基準で設定されているのでしょうか。
それではドッグフードがどのような基準で作られているのか、フードの栄養基準について見ていきましょう。
目 次
じつはドッグフードに含まれる栄養については、法律で何も基準が定められていません。
2009年に施行されたペットフード安全法では、フードの安全を守るため製造基準や表示基準などで規制が設けられていますが、フードに含まれる栄養に関しては一切触れられていないのです。
とはいえドッグフードは栄養バランスを何も考えずに作られているわけではありません。
栄養に関する法律はないものの、国内に流通するドッグフードの9割以上がAAFCO(米国飼料検査官協会)のガイドラインをもとに、栄養バランスを調整してドッグフードを製造しています。
なおAAFCOとは、ペットフードの栄養基準やラベル表示などのガイドラインを設定する協会のこと。ワンちゃんに必要な栄養を補えるように、フードに含まれる栄養成分の基準値を設定しています。
ちなみにAAFCOの栄養基準は各栄養素の必要量が細かく設定されているため、日本だけでなく世界中のペットフードの栄養基準として採用されている国際的な基準です。
なおAAFCOの栄養基準は、ワンちゃんに必要な最低限の栄養量が示されています。そのためAAFCO基準をクリアしているフードであれば、ワンちゃんが栄養不足に陥る心配はありません。
さらにAAFCOの基準をもとに市販のフードの栄養量をチェックすれば、タンパク質が多く含まれているフードや低脂肪のフードなど、フードの栄養面の特徴が分かるためフードを選ぶときも役立ちます。
それではAAFCOの栄養基準について詳しく見ていきましょう。
AAFCOの基準は世界中のドッグフードで利用されていますが、どんなタイプのフードにも当てはまるわけではありません。
AAFCOの基準はワンちゃんに必要なすべての栄養素について設定されているため、対象のフードはワンちゃんが主食として食べる総合栄養食と呼ばれるドッグフードだけ。ジャーキーやガムなどのおやつは対象外です。
なお総合栄養食と呼ばれるフードは、ワンちゃんに必要な栄養がバランス良く含まれていないと総合栄養食として認められません。
そのため総合栄養食のフード以外は新鮮な水さえ与えていれば、ワンちゃんは年齢に応じた健康を維持できるとされています。
ちなみに総合栄養食のフードは、カリカリのドライタイプとウェットタイプの2種類。
AAFCOでは両タイプの基準を設定していますが、今回は一般的に利用の多いカリカリタイプのドライフードの基準について確認していきます。
またAAFCOの栄養基準はさまざまな栄養素について細かく設定されているので、代表的な4つの栄養素(タンパク質・脂質・ミネラル・ビタミン)に分類してチェックしていきます。
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AAFCOの基準がある栄養素
それではタンパク質から順に見ていきましょう。
※AAFCOの基準はすべて乾燥重量値(フード含まれる水分を差し引いた値)
タンパク質はワンちゃんの成長や体の維持に欠かせない重要な栄養素。ワンちゃんの被毛や皮膚、筋肉、ホルモン、抗体(免疫物質)などはすべてタンパク質からつくられます。
そのためAAFCOでは栄養素のなかで、タンパク質の必要量を最も多く設定しています。
AAFCOのタンパク質の基準値
AAFCOが示すフードに含まれるタンパク質の必要量は幼犬22.5%以上、成犬18.0%以上です。
なお幼犬と成犬に分けて必要量が設定されている理由は、幼犬と成犬では1日に必要な栄養バランスがちがうから。
体が発達途中の1才未満(大型犬は1才半~2才)の幼犬は、成犬よりも多くの栄養が必要になります。そのため幼犬と成犬の2タイプに分けて設定されているのです。
もちろんワンちゃんの体づくりに欠かせないタンパク質も、成犬より幼犬のほうが多く設定されています。
フードを選ぶ際はタンパク質が上記の割合を上回っているフードを選ぶようにしましょう。
またAAFCOではタンパク質のもととなるアミノ酸についても、細かく基準値を設けています。
アミノ酸はタンパク質の構成成分です。約20種類あるアミノ酸がさまざまな組み合わせをすることで、色々な種類のタンパク質がつくり出されます。
なお20種類のアミノ酸のうち、10種類はワンちゃんの体内でつくり出せますが、残りの10種類は体内で十分な量をつくり出せません。
体内で必要量をつくり出せないアミノ酸は「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事で補う必要があります。
そのためAAFCOでは食事からの摂取が必要な10種類の必須アミノ酸について、下記のように基準を設定しています。
AAFCOのアミノ酸の基準値
栄養素 | 単位 | 幼犬 | 成犬 |
---|---|---|---|
アルギニン | % | 1.0以上 | 0.51以上 |
ヒスチジン | % | 0.44以上 | 0.19以上 |
イソロイシン | % | 0.71以上 | 0.38以上 |
ロイシン | % | 1.29以上 | 0.68以上 |
リジン | % | 0.9以上 | 0.63以上 |
メチオニン+シスチン | % | 0.7以上 | 0.65以上 |
フェニルアラニン+チロシン | % | 1.3以上 | 0.74以上 |
トレオニン | % | 1.04以上 | 0.48以上 |
トリプトファン | % | 0.2以上 | 0.16以上 |
バリン | % | 0.68以上 | 0.49以上 |
ちなみに上記の必須アミノ酸は、すべての食品に含まれているわけではありません。
タンパク質には小麦やトウモロコシに含まれる植物性タンパク質と、肉や魚に含まれる動物性タンパク質の2種類があり、10種類の必須アミノ酸すべてを含むのは肉や魚の動物性タンパク質だけ。
小麦や大豆に含まれる植物性タンパク質だけでは、必須アミノ酸は補えないのです。
そのため小麦やトウモロコシよりも肉や魚が主原料のフードのほうが、ワンちゃんに必要な必須アミノ酸をしっかり摂取できます。
次は脂質についてです。
油は太るイメージが強いので、脂質量の多いフードに抵抗がある飼い主さんもいるかもしれません。
しかし油(脂質)はワンちゃんの皮膚や被毛の健康維持に欠かせない大切な栄養素です。
まず脂質は皮膚からの水分喪失を防ぐ役割があります。脂質を十分に摂取していると皮膚細胞に含まれる脂質が水分の蒸発を防ぎ、かゆみなどを引き起こす皮膚の乾燥を予防します。
またツヤのある毛並みの維持にも脂質が重要。脂質が十分に行き届いた被毛はパサつかず、防水効果も発揮します。
ほかにも脂質は体を動かすエネルギーとして使用されたり、脂溶性ビタミンの吸収のサポート、細胞を守る細胞膜の成分など、さまざまな役割があります。
ただ脂質は摂り過ぎると肥満につながるので、タンパク質ほど多くの量は必要ではありません。
そのためAAFCOでも脂質の必要量は幼犬8.5%以上、成犬5.5%以上と、タンパク質よりも低めの数値で設定されています。
AAFCOの脂質の基準値
ちなみに市販のフードはAAFCOの基準よりも脂質量の多いフードがほとんどです。
ただAAFCOの基準は最低限の量が設定されているので、AAFCOの基準より脂質が多くてもフードの給与量を守っていれば肥満になる心配はありません。
また脂質はタンパク質と並んでワンちゃんの体に欠かせない栄養素のため、脂質に含まれる脂肪酸(油の成分)についても細かく基準が設けられています。
タンパク質のもととなるアミノ酸と同じように、脂質は脂肪酸と呼ばれる油の成分でできています。
そして脂肪酸のなかにも食事でしか十分な量を補えない種類があります。それはオメガ6(リノール酸)とオメガ3(α-リノレン酸・EPA・DHA)です。
AAFCOではオメガ6を幼犬1.3%以上、成犬1.1%以上に、オメガ3を合計で0.13%以上に設定しています。
AAFCOの脂肪酸の基準値
栄養素 | 単位 | 幼犬 | 成犬 | |
---|---|---|---|---|
オメガ6 | リノール酸 | % | 1.3以上 | 1.1以上 |
オメガ3 | αリノレン酸 | % | 0.08以上 | 未設定 |
EPA+DHA | % | 0.05以上 | 未設定 |
ワンちゃんの皮膚や被毛の健康維持には、オメガ6とオメガ3をバランス良く摂取する必要があります。
特に必要量の多いオメガ6は過剰摂取すると、体内に炎症物質を発生させて皮膚の炎症や脱毛を引き起こす危険性があるため、オメガ6を偏って摂取しないように注意が必要です。
一方、オメガ3はオメガ6の炎症を抑える働きがあります。
必要量はごくわずかなので成犬の基準値は設定されていませんが、関節痛の緩和や被毛の減少を防止する効果も期待されているので、健康維持のために積極的に摂取したい成分です。
次はミネラルの基準についてです。
ミネラルはカルシウムやナトリウム、鉄などの栄養成分の総称。骨や歯の発達、神経・ホルモンの正常化、体内の水分バランスの調整など、全身の組織や機能に欠かせません。
ちなみに100種類以上あるといわれるミネラルのなかで、ワンちゃんに必要なミネラルは18種類。
必要量の多い多量ミネラル7種類と、必要量の少ない微量ミネラル11種類です。
多量ミネラル 7種類
微量ミネラル 11種類
AAFCOでは多量ミネラルを中心に12種類のミネラルの基準値を設定しています。
AAFCOのミネラルの基準値
栄養素 | 単位 | 幼犬 | 成犬 |
---|---|---|---|
カルシウム | % | 1.2~1.8 | 0.5~1.8 |
リン | % | 1.0~1.6 | 0.5~1.6 |
カルシウム:リン比率 | - | 1:1~2:1 | 1:1~2:1 |
カリウム | % | 0.6以上 | 0.6以上 |
ナトリウム | % | 0.3以上 | 0.08以上 |
塩素 | % | 0.45以上 | 0.12以上 |
マグネシウム | % | 0.06以上 | 0.06以上 |
鉄 | mg/kg | 88以上 | 40以上 |
銅 | mg/kg | 12.4以上 | 7.3以上 |
マンガン | mg/kg | 7.2以上 | 5.0以上 |
亜鉛 | mg/kg | 100以上 | 80以上 |
ヨウ素 | mg/kg | 1.0~11 | 1.0~11 |
セレン | mg/kg | 0.35~2 | 0.35~2 |
なおワンちゃんに必要な栄養が含まれている総合栄養食のドッグフードは、これらのミネラルをバランス良く調整して作られているので、過不足の心配はほぼありません。
一方、注意が必要なのはフード以外にサプリなどの栄養補助食品を与える場合です。
じつはミネラルは相互作用といって、18種類のミネラルのうち1種類でも過不足が起これれば、他のミネラルの働きにも悪影響を及ぼしてしまうのです。
そのためサプリなどで特定のミネラルを摂取すると、フードに含まれるミネラルバランスが崩れる可能性があります。
フードの栄養バランスを崩さないように、サプリなどの栄養補助食品を利用する場合は必ず獣医さんに相談してから利用しましょう。
さいごはビタミンの基準についてです。
体に良いと思われているビタミンも、摂りすぎは体に負担をかけることが分かるようにしてください
ワンちゃんの体にとってビタミンは最も必要量の少ない栄養素です。そのため与えすぎないように注意が必要です。
なおビタミンには油に溶けやすい脂溶性ビタミン(ビタミンA・ビタミンE・ビタミンD・ビタミンK)と、水に溶けやすい水溶性ビタミン(ビタミンB群)の2種類があります。
このうち過剰摂取に注意が必要なのは、脂溶性ビタミンのビタミンA・ビタミンE・ビタミンD・ビタミンKの4つ。
脂溶性ビタミンは水に溶けにくいので体内に溜まりやすく、過剰症を引き起こす場合があります。
主な過剰症はビタミンAによる肝臓への負担の増大、ビタミンDの高カルシウム血症など。
またAAFCOでも各ビタミンについて、下記の基準値を設定しています。
AAFCOのビタミンの基準値
栄養素 | 単位 | 幼犬 | 成犬 |
---|---|---|---|
ビタミンA | IU/kg | 5000~250000 | 5000~250000 |
ビタミンD | IU/kg | 500~3000 | 500~3000 |
ビタミンE | IU/kg | 50以上 | 50以上 |
チアミン(ビタミンB1) | mg/kg | 2.25以上 | 2.25以上 |
リボフラビン (ビタミンB2) | mg/kg | 5.2以上 | 5.2以上 |
パントテン酸(ビタミンB5) | mg/kg | 12以上 | 12以上 |
ナイアシン(ビタミンB3) | mg/kg | 13.6以上 | 13.6以上 |
ビタミンB6 | mg/kg | 1.5以上 | 1.5以上 |
葉酸 | mg/kg | 0.216以上 | 0.216以上 |
ビタミンB12 | mg/kg | 0.028以上 | 0.028以上 |
コリン | mg/kg | 1360以上 | 1360以上 |
ちなみにフードに含まれるビタミンもミネラルと同じく、各フードメーカーが過剰にならないように調整しているので心配ありません。
ただしサプリなどの栄養補助食品でビタミンを与える場合は過剰摂取になる可能性もあるので、必ず獣医師に相談してから利用しましょう。
また健康なワンちゃんは、炭水化物に含まれるブドウ糖をもとに体内でビタミンCをつくり出すことができるため、絶対に摂取が必要ではありません。
しかしビタミンCは活性酸素の攻撃から免疫細胞を守ったり、ビタミンEの働きをサポートするなど、健康維持に役立つ栄養素でもあります。
そのため免疫力の落ちた高齢のワンちゃんなどは、ビタミンCそのものを摂取して免疫力の維持をサポートするのもおすすめです。
以上がAAFCOで設定されているドッグフードの栄養基準です。
国内に流通するドッグフード(総合栄養食)のほとんどが、AAFCOの基準をもとに作られています。
しかし同じ基準をもとに作られているのに、メーカーや種類によってフードの栄養バランスがちがうのはなぜでしょうか…。
それは原材料のちがいや各メーカーが重視する栄養面のポイントがちがうからです。
まずAAFCOの基準でも幼犬と成犬は別々に設定されています。幼犬と成犬では必要な栄養バランスがちがうため、幼犬用と成犬用のフードの栄養バランスは当然ちがいます。
また原材料に使用される食材や割合によっても、タンパク質や脂質の量などは変わります。
AAFCOの基準はワンちゃんに必要な最低限の栄養量が設定されているので、各メーカーはその基準をもとに独自の栄養バランスでフードを製造するため、フードの栄養バランスはメーカーや種類によってちがうのです。
AAFCOの基準はワンちゃんに必要な最低限の栄養量を示した、ドッグフードの国際的な栄養基準です。
AAFCOの基準を満たしていないフードだけでは、ワンちゃんに必要な栄養は摂取できないのでフードを選ぶ際は「AAFCO基準をもとに製造している」などの表示があるか確認しましょう。
また各栄養素の働きと摂取・制限が必要なワンちゃんについては、栄養素の記事で詳しくお伝えします。
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