よだれが多すぎる場合は、体の異変を知らせるサインかもしれません
よだれの異変には、どのような危険性があるのか見ていきましょう!
「愛犬がよだれを大量に垂らしている!」
散歩中にふと愛犬を見ると、口から大量のよだれが出ていることってありませんか?
多少のよだれは問題ありませんが、ポタポタと流れ落ちるほどよだれが多い、体が震えている、吐いたなど、ほかにも症状がある場合は注意が必要です!
それでは、危険なよだれの症状と疑われる病気について、一緒に確認しましょう。
よだれが多すぎる場合は、体の異変を知らせるサインかもしれません
よだれの異変には、どのような危険性があるのか見ていきましょう!
それではまいります。
まずは、犬のよだれ(唾液)の役割から確認しましょう。
犬の唾液には、「体温調節」「口の中の洗浄・粘膜の保護」「食事(咀嚼・嚥下)のサポート」の3つの役割があります。
体温調節
唾液の大きな役割の1つが体温調節です。
字強調犬は汗をほとんどかかないため、唾液を蒸発させて体温調節をおこないます。
舌を出しながらハアハアと浅く速い呼吸(パンティング)が特徴的です。
ちなみに、ハアハアと荒い呼吸は見た目が苦しそうですが、体温を下げる効果は抜群!
パンティングによる体温調節は、人が汗をかいて体温を下げるのと同レベルの効果があります。
散歩や体を動かしているときによく見られ、体温が下がると通常の呼吸に戻ります。
口の中の洗浄・粘膜の保護
唾液には、菌の増殖を防ぐ成分が含まれているため、口の中の洗浄や粘膜を保護する役割があります。
また、唾液があることで口の乾燥が防がれるため、乾燥による口臭も発生しません。
その他にも、口の内側の粘膜も一定の水分が維持されるので、ジャーキーや骨などの硬い食べ物を噛んでも口の中が傷つきません。
食事(咀嚼・嚥下)のサポート
人の唾液にはデンプンの消化酵素「アミラーゼ」が含まれていますが、犬の唾液にはアミラーゼが含まれていません。
ですから、犬は口の中で食べ物と唾液を混ぜ合わしても、食べ物は消化されません。
ただ、唾液は食べ物を飲み込みやすくする働きがあり、喉づまりを防止する効果があります。
愛犬の多くはドッグフードをしっかり噛まずに丸飲みするため、唾液による嚥下(えんげ:飲み込む)のサポートは重要です。
このように犬の唾液(よだれ)には、体温調節や口の中の環境を整える役割があります。
ハアハアと荒い呼吸のパンティングは、散歩や運動後によく見られます
犬にとっては体温調節をおこなう自然な行動ですが、いつまでも続く場合は注意が必要です
それでは、危険なよだれの症状について見ていきましょう。
唾液は犬の体に欠かせないために欠かせないため、よだれが少しくらい出ても問題ありません。
ただし、「よだれが大量に出る」「よだれが止まらない」「体が震えている」などの症状があれば注意が必要です。
体の不調や病気が原因で、よだれが出ていることが考えられます。
次のような症状がないか、愛犬のようすを確認しましょう。
・大量のよだれ
・よだれが止まらない
・呼吸が荒い
・よだれに血が混ざっている
・泡状のよだれ
・よだれが臭い
・体が震えている
・吐きそうにしているが吐けない
・落ち着きがない
また、このような症状を引き起こす主な原因は、次のとおりです。
危険なよだれの原因
1つずつ詳しく見ていきましょう。
●緊張したときの仕草・行動
よだれが大量に出る、あくびをする、口をもぐもぐ動かす、舌をペロペロするなど
犬は緊張すると、よだれが大量に出ることがあります。
愛犬のよだれが多くなるのは、動物病院やペットホテルなどの特定の場所ではありませんか?
なお、動物病院は愛犬が苦手な場所だと飼い主さんも理解している場合が多いですが、見落としがちなのがドッグランです。
普段の散歩では、道ですれ違うほかの犬と仲良くできる場合でも、慣れない場所や大勢の犬がいるドッグランの環境に緊張する愛犬もいます。
ドッグランに行くと「元気がなくなる」「よだれが大量に出る」などの症状が見られたら、ドッグランの環境に緊張している可能性が考えられます。
我が家の愛犬も大勢のワンちゃんがいるドッグランは苦手です
そのため我が家はドッグランの代わりに大きめの公園で、自分たちのペースで遊んだりゆっくり過ごすようにしています
●熱中症の症状
大量のよだれ、呼吸が荒い(過剰なパンティング)、ぐったりしている、上手く歩けない、下痢、嘔吐、体が熱い(40℃以上)、けいれん、意識障害など
夏場の散歩中に大量のよだれが出た場合は、熱中症の危険性があります。
とくに7~8月は、日中を避けて夕方以降に散歩に出る人も多いと思いますが、黒いアスファルトなどは熱がまだ引いておらず、夕方でも気温・湿度ともに高いです。
とくに小型犬は地面との距離が近いため、地面の反射熱を直に受けることに・・。
またフレンチブルドッグやパグなど鼻の低い犬種は、体温調節が苦手なため熱中症を起こしやすく注意が必要です。
保冷ベストやスカーフの利用、地面の温度を手で確かめてから愛犬をおろす、日陰だけを通るなどの工夫をして熱中症を予防しましょう。
熱中症は外だけでなく、家の中でも起こります
室内の温度管理やしっかり水分補給ができる環境をつくってあげましょう
●胃捻転の症状
大量のよだれ、吐こうとするが吐けない(空おう吐)、呼吸が苦しそう、お腹がパンパンに膨れている、ぐったりして元気がない、粘膜が青白いなど
食後に大量のよだれが出たり、吐こうとするが吐けない、呼吸が荒く苦しそうなどの症状が見られたら、「胃捻転(胃拡張胃捻転)」を起こしている危険性があります。
●胃捻転とは?
胃捻転とは、大量発生したガスにより胃がねじれて、胃の中の食べ物を吐き出すことも腸へ移動させることもできなくなる状態のこと。
胃の中に発生したガスにより、風船を膨らましたようにお腹がパンパンに膨らみます。
胃捻転になるとショック状態に陥りやすく、治療が遅れると命にかかわる危険性の高い病気です。
胃捻転の原因ははっきりと分かっていませんが、食後すぐの散歩や運動、早食い・丸飲みは胃捻転を起こすリスクが高いとされています。
とくに胸の深い(胸から足のつけ根に向かって上がっている)大型犬は、胃捻転を起こしやすいので注意が必要です。
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマン、セントバーナード、グレートデン、ボクサー、ジャーマンシェパード、アイリッシュセッター、スタンダードプードルなど、体重25kg以上の大型犬・超大型犬
なお、胃捻転を起こさないように、つぎの2点に注意しましょう。
●胃捻転を防ぐポイント
基本的に、散歩は食事の前に済ませましょう。
また食後に散歩に行く場合は、食後2時間以上あければ問題ありません。
早食いや丸飲みも胃捻転のリスクを高めるので、早食い防止のお皿を利用したりドッグフードをぬるま湯(40℃前後)でふやかして、一気に丸飲みできないようにしましょう。
胃捻転は大型犬に起こりやすいですが、小型犬でも発症します。
小型犬や中型犬も、食後すぐの散歩や激しい運動は控え、早食い・丸飲みを防止してあげましょう。
●誤飲(中毒症)の症状
よだれ、嘔吐、下痢、体の震え、血尿、呼吸が荒い、貧血、けいれんなど
ブドウや玉ねぎなど犬が食べてはいけない食品、薬品(殺虫剤・除草剤)、おもちゃ、電池などを愛犬が誤って飲み込んでしまう場合も、大量のよだれが出ます。
とくに子犬は目の前にあるものを何でも口に入れる可能性があるので、愛犬の目の届く範囲に食品や薬、小さなおもちゃなどを置かないように気をつけましょう。
なお、犬が食べると中毒症状の危険がある食材は、つぎの7つです。
犬が食べると危険な食品
摂取した量や愛犬の体質によって症状に差はありますが、これらの食品を食べると、嘔吐や下痢、体の震え、貧血、不整脈、けいれんなどを起こして、最悪の場合は命を落とす危険性があります。
ほかにも、散歩のときに草を舐めたり食べる癖がある愛犬は、殺虫剤や除草剤を知らずに摂取する恐れも・・。
また、スズランやヒガンバナ、ユリなどの花も有毒成分があり、愛犬が食べると危険です。
愛犬が誤って食べてしまった場合は、誤飲物を取り除いたり解毒処置が必要なので、すぐに病院へ連れていきましょう。
●てんかんの症状
よだれを流す、口をくちゃくちゃさせる(チューイングガム発作)、けいれん、落ち着きがない、自分のしっぽを追いかてグルグル回る、無意識に手足をバタバタさせる、意識障害など
愛犬がよだれを流したあとに、けいれん(手足や顔などの体の一部、または全身)が起こった場合は、「てんかん」の疑いがあります。
●てんかんとは?
てんかんとは、脳の神経細胞の異常によってけいれんを引き起こす病気です。
脳の腫瘍の影響によって起こる場合もありますが、脳に異常が確認されず原因不明で起こる場合もあります。
【症候性てんかん】脳腫瘍や外傷による脳障害の影響が原因
【特発性てんかん】原因不明(遺伝の影響が多少あるとされている)
【潜因性てんかん】症候性てんかんの疑いがあるが、検査では異常のないてんかん
てんかんは、けいれんが起こる前に「よだれを流す」「落ち着きがなくなる」などの症状が見られ、その後に手足などの体の一部、または全身性のけいれんが起こります。
発作が起きている間は意識がなく、おしっこやウンチを漏らしてしまう場合も・・。
なお、発作は数秒~数分で自然と治まり、愛犬自身はケロリとして発作が起こる前と変わらない様子に戻ります。
重度になると頻繁にてんかんを繰り返す場合があるので、愛犬にてんかんの症状が見られたら、一度獣医さんに診てもらいましょう。
●歯周病の症状
歯垢・歯石の沈着、口臭がキツくなる、歯茎の腫れ・赤み、くしゃみ・鼻水・よだれが増える、よだれに血が混ざっている、口から食べ物をこぼすなど
「愛犬がよだれや鼻水をよく流す」「よだれに血が混ざっている」「よだれが臭い」などの場合は、歯周病がかなり進行している危険性があります。
歯周病は進行性の病気です。
はじめは歯茎が少し腫れる程度ですが、そのまま放っておくと歯茎の奥の歯周組織を破壊して、顎の骨が溶けたり顔の皮膚に穴が開くなど、症状はどんどん酷くなります。
重度の歯周病になると、痛みにより口をしっかり閉じられません。
そのため、よだれが流れ落ちたり歯茎から出血した血がよだれに混ざります。さらに歯周病は口臭がキツくなるため、よだれも生臭くなります。
成犬の8割は「歯周病予備軍」といわれるほど、歯周病は犬に多い病気です。
歯周病を予防するには、少なくても3日に1回は歯みがきで愛犬の口の中をキレイにしてあげましょう。
愛犬から大量のよだれが出ていたら、ほかに体の異変がないか確認しましょう。
緊張によるよだれの危険性は低いですが、熱中症や胃捻転、誤飲などは早急な処置・治療が必要です。
異変にすぐ気がつけるように、散歩中や普段過ごしているときも愛犬の様子や表情をこまめに観察しましょう。
※参考文献
【一般社団法人ペットフード協会・ペットフート販売士認定講習会テキスト】
「犬・猫の体の構造と生理」「犬・猫の栄養に関する基礎知識」より
※参考サイト:犬のよだれが止まらない!考えられる原因とは
※参考サイト:犬のパンティングとは?
※参考サイト:だいじょうぶ? マイペット-よだれが出ます-
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