犬に塩分は必要?ドッグフードの塩分量や過剰摂取による病気のリスクは?

犬に塩分は必要?ドッグフードの塩分量や過剰摂取による病気のリスクは?

「犬に塩分はほとんど必要ない」。こんな話をきいたことはありませんか?

たしかに犬は塩分を大量に摂取する必要はありませんが、この表現では犬は塩分をまったく必要ないと誤解する人もいると思います。

ほかにも犬と塩分の関係については、正確な情報が誤った形で伝えられているものがよく見かけられます。

そこで、「犬に塩分は必要なのか?」「塩分を摂り過ぎた場合はどうなるのか?」など、犬と塩分の関係について調べてみました。

愛犬の健康のためには塩分とどのようにつき合えば良いのか、詳しく見ていきましょう。

犬に塩分は要る?要らない?

犬に塩分は要る?要らない?

結論からいうと、人と同じく犬にも塩分(ナトリウム)が必要。塩分は犬の体に欠かせないミネラルの1つです。

ただ犬が必要とする塩分量はごくわずか。そのためドッグフードなどの食事をしっかり摂取していれば、犬はわざわざ塩分を摂取しなくても1日の必要量は十分満たされます。

ちなみにドッグフードの栄養基準を定めるAAFCO(米国飼料検査官協会)では、犬の1日に必要なナトリウム量を子犬(幼犬)で0.3%、成犬で0.08%と設定しています。

ナトリウムの必要量

    子犬:0.3%以上

    成犬:0.08%以上

なお愛犬の主食として使用できる「総合栄養食」と呼ばれるドッグフードは、ナトリウムを含む犬に必要な栄養が、バランス良く摂取できるように調整して作られています。

もちろん、ナトリウムもAAFCOの値を参考に調整されているので、愛犬の主食にドッグフードを使用している場合はナトリウムが不足することも過剰摂取になることもありません。

また一部では、塩が使用されているドッグフードは「悪い・危険なフード」だとする意見もありますが、重要なのは塩の使用有無よりドッグフードに含まれているナトリウムの値です。

また一部では、塩が使用されているドッグフードは「悪い・危険なフード」だとする意見もありますが、重要なのは塩の使用有無よりドッグフードに含まれているナトリウムの値です。

たとえ原材料に塩が使用されていても、フードに含まれるナトリウム値が平均値の範囲であれば何も問題ありません。栄養バランスの調整のために塩が使用されたと考えられるからです。

反対に原材料に塩が使用されていなくても、ナトリウム値が高すぎるドッグフードはナトリウムの過剰摂取に注意が必要です。

このように大事なのは塩の使用・不使用ではなく、塩分(ナトリウム)がどのくらい含まれているかどうかです。

なお、市販のドッグフードに含まれるナトリウムの平均値は0.3%前後。

どの年齢のワンちゃんでも食べられるように、AAFCOが定める子犬のナトリウム必要値0.3%を満たすように作られているフードが多い傾向にあります。

そのため原材料に塩が使用されていても、ナトリウム値が0.3%前後であれば、問題ありません。

一方、塩が使用されていなくてもナトリウム値が0.5%以上のドッグフードは、ナトリウムを過剰摂取してしまうので購入は避けましょう。

手作り食の場合は塩分を加えるほうが良い?

手作り食の場合は塩分を加えるほうが良い?

また手作り食の場合は飼い主さん自身が、愛犬に必要な栄養バランスを調整する必要があります。とはいえ、手作り食の場合も塩分を加える必要はほとんどありません。

なぜなら犬が1日に必要なナトリウム量はごくわずかなため、食材に含まれるナトリウム量で十分補えるからです。

ただナトリウムが補えるのは、肉や魚などの動物性食品を使用した場合だけ。

野菜にはナトリウムがほとんど含まれていないので、野菜や穀物だけを使用した手作り食ではナトリウムを補えません。

そのため手作り食の場合はナトリウムも食材から摂取できるように、肉か魚を必ず使用するようにしましょう。

ここまでの内容から、犬に塩分(ナトリウム)が必要なことが分かりました。

それでは、ナトリウムにはどのような働きがあるのか見ていきましょう。

ナトリウムは体の中でどのような働きがあるの?

ナトリウムは体の中でどのような働きがあるの?

塩分(ナトリウム)は犬の体に欠かせないミネラルの1つで、主な働きは体内バランスのコントロールです。

体内の水分や細胞と細胞の間にある体液、体内を循環する血液の量を調節して、体がむくまないように予防したり心拍数や血圧を正常に維持する働きがあります。

また神経の情報伝達、筋肉の収縮、糖やアミノ酸の腸管での吸収など、体のさまざまな働きにも関わっています。

そのためナトリウムを過剰摂取すると、全身がむくんだり体内を巡る血液量が増えて心拍数が上昇して高血圧を引き起こすことに。

反対にナトリウム不足は、食欲不振や吐き気、筋肉痛などの症状があらわれます。

ナトリウムの体への影響

【不足】食欲不振、吐き気、筋肉痛など

【過剰】体のむくみ、心拍数の上昇、高血圧など

またナトリウムをはじめ、犬の体はカルシウムや鉄など合計18種類のミネラルが必要です。

犬に必要なミネラル

    【主要ミネラル 7種類】

  • カルシウム
  • リン
  • クロライド(塩素)
  • マグネシウム
  • カリウム
  • イオウ
  • ナトリウム

  • 【微量ミネラル 11種類】

  • 亜鉛
  • セレン
  • ヨウ素
  • クロム
  • フッ素
  • コバルト
  • モリブデン
  • ホウ素
  • マンガン

この18種類のミネラルは「相互作用」といって、お互いにバランスを取りながら体に作用します。

そのため1種類だけ極端に摂取量が多かったり少なかったりすると、お互いのバランスが崩れてそれぞれのミネラルが正常に機能しなくなるのです。

ですからミネラルバランスを崩さないように、愛犬に与えるナトリウム量はAAFCOのナトリウム値(子犬:0.3%、成犬:0.08%)の範囲内に抑える必要があります。

また私たち人は、体内の余分な塩分を汗などから体の外へ排出できますが、ワンちゃんは摂りすぎた塩分をどのようにして体の外へ出すのでしょうか?

犬は汗をほとんどかかない!塩分を摂り過ぎたらどうなるの?

犬は汗をほとんどかかない!塩分を摂り過ぎたらどうなるの?

犬は塩分を摂りすぎた場合、汗ではなく尿と一緒に体の外へ排出させます。

ちなみにネットなどで見かける、「犬は汗をかかないから体内の余分な塩分を排出できない」という情報はまちがいです。

犬は人ほど大量に汗をかかないのは事実ですが、犬の体には「アポクリン汗腺」という汗腺が全身にあります。汗をかく量が少ないだけで、汗をかかないわけではありません。

そもそも塩分の排出手段が汗だけに限定されているのが誤解です。じつは人も摂取した塩分の98%は尿となって排出されます。
(参照)http://www.hokushin-hosp.jp/general/advice/2017/06/post-14.php

大量の汗をかく人も体内の塩分を排出する手段のほとんどが、尿からの排泄なのです。ですから犬の発汗量と体内の塩分排出に関連性はありません。

以上のことから、犬は摂り過ぎた塩分を尿から排泄できることが分かりました。しかし体内の不要な塩分をスムーズに排泄できるのは健康な犬だけだといいます。

その理由を詳しく見ていきましょう。

心臓病になると体の塩分(ナトリウム)を排出できない

心臓病になると体の塩分(ナトリウム)を排出できない

犬も体内で不要となった塩分を尿から体の外へ排出できます。

ところが犬は心臓病にかかると、塩分を排出させる機能が低下するため体内の不要な塩分をスムーズに排泄できなくなるのです。

塩分が排出されずに体内の塩分濃度が高まると、心臓にさらに負担がかかり症状を悪化させる危険性があります。

また心臓病と同じく高齢犬で発症の多い腎臓病は、少量の塩分で症状が進行する恐れがあり注意が必要。

そのうえ心臓病と腎臓病のどちらも目立った初期症状がなく、とくに腎臓病は腎臓が4割以上破壊されてからでないと表立った症状が現れない気が付きにくい病気です。

腎臓は一度破壊されると回復できないので、まずは発症を予防することが大事。また腎臓病を発症してしまった場合は、症状の進行をできる限り遅らせることが重要になります。

そのためには愛犬が高齢になる前から、塩分(ナトリウム)を摂り過ぎに注意すること。

ドッグフードに含まれるナトリウム値は、市販のドッグフードの平均値である0.3%以内のものを選ぶように意識しましょう。

また人の食事は塩分が多いので絶対に与えないこと。犬用のジャーキーやチーズなどにも塩分が含まれているので、おやつばかり与えるのはやめましょう。

ほかにも犬と猫の両方を飼っているお家は、愛犬がキャットフードを食べないように注意が必要。

猫は犬より多くの塩分が必要なので、キャットフードにはドッグフードより塩分が多く含まれています。

そのため猫の食べ残したキャットフードを愛犬が食べてしまうと、塩分を摂りすぎる可能性があるので、キャットフードを食べないようにきちんと覚えさせましょう。

さいごに、愛犬が熱中症になった場合は塩分を摂らせたほうが良いのか調べてみました。

犬が熱中症になったら塩分を与えたほうが良い?

犬が熱中症になったら塩分を与えたほうが良い?

人は大量に汗をかいたときや熱中症予防に、少量の塩分の摂取が推奨されています。それでは、愛犬が熱中症になった場合も私たちと同じように塩分を摂らせるほうが良いのでしょうか。

答えは、いいえです。犬が熱中症になっても飼い主さんの判断で塩分を摂取させてはいけません。

愛犬が熱中症になった場合の応急処置は、「体を冷やす」と「水分補給」の2点です。

愛犬が熱中症になった場合の応急処置は、「体を冷やす」と「水分補給」の2点です。

水を全身にかけて急いで体温を下げ、動脈のある部分と頭を冷やします。

愛犬が熱中症になった場合の応急処置は、「体を冷やす」と「水分補給」の2点です。

気道を塞がないよう舌は外へ出しておきます。

引用元:https://www.iris-pet.com/

犬が熱中症になった場合にまず必要なのは、体を冷やすこと。全身に水をかけて体温を下げたり、保冷剤や氷が用意できるのであれば、頭と首、ワキ、後ろ足の付け根にあてて体の熱を冷まします。

また獣医さんに連絡して指示を仰ぎ、病院に連れていきましょう。

このように犬の熱中症対策で重要なのは、熱を取り除くこと。犬は塩分(ナトリウム)の必要量がごくわずかなので、人と同じ感覚で与えてはいけません。

以上が、犬と塩分の関係についてです。

塩分(ナトリウム)は体に欠かせないミネラルの1つですが、過剰摂取すると心臓病や腎臓病に影響する注意が必要な栄養成分です。

愛犬の健康維持のためには、若く元気なうちから濃い味の食べ物を与えないように塩分控えめを心がけましょう。

まとめ

犬に塩分は必要ないという情報もありますが、塩分(ナトリウム)は犬の体の維持に欠かせないミネラルです。

ただ体に必要な量はごくわずかなので、ドッグフードや手作り食の場合は肉や魚を使用したメニューであれば、塩分をわざわざ与える必要はありません。

また健康な犬は塩分を摂りすぎても尿から排泄できますが、塩分の取り過ぎは腎臓病や心臓病のリスクを高める危険性があるので、人の食事は絶対に与えないこと。

犬用のジャーキーやチーズもたくさん摂取すれば塩分過多になるので、与えすぎには注意しましょう。

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