犬の尿の異変は、病気を知らせる重要なサインです
どのような病気の危険性があるのか、詳しく見ていきましょう
愛犬のオシッコがいつもと違う・・
愛犬の尿の色が濃い、茶色い、薄い、血尿、大量に出る、または量が少ないなど、「オシッコがいつもと違う・・」と感じたら要注意!
犬は病気や体の不調が、尿の色や量、ニオイに異変となって現れやすいです。
そのため愛犬のオシッコがおかしいと感じたら、それは愛犬の病気を知らせるサインかもしれません。
そこで尿の異変によって疑われる病気について、症状別にまとめてみました。愛犬の尿の異変から考えられる病気は何か、一緒に確認しましょう。
犬の尿の異変は、病気を知らせる重要なサインです
どのような病気の危険性があるのか、詳しく見ていきましょう
それではまいります。
目 次
犬の尿は、食べ物や飲む水の量によって色や量に多少のちがいがあります。
しかし普段の尿と比べて、色が薄い、黄色が濃すぎる、茶色い、オレンジがかっている、赤い、白く濁っている、量が多い、または少ないなど、明らかな異変があれば病気の危険性があります。
とくに尿の異変の原因で多いのは、腎臓の機能低下です。
腎臓は尿をつくり出す器官です。
血液に含まれる余分な水分や老廃物、毒素をろ過して、尿をつくり出します。
腎臓の機能が低下すると、尿として排泄されるはずの老廃物や毒素がろ過されず、血液中に残ったままになることで、さまざまな病気が引き起こされます。
なお、腎機能の低下により体内の水分が尿として大量に排泄されると、体から失われた水分を補おうと水をたくさん飲む「多飲多尿」の症状が見られます。
●犬の多飲多尿の目安
【多飲】
1日に摂取する水の量が、体重1kgあたり100ml以上の場合
※食品に含まれる水分も含む
【多尿】
1回に排出する尿の量が、体重1kgあたり50ml以上の場合
尿の異変で疑われる主な病気は、次のとおりです。
尿の状態と疑われる病気
尿の状態 | 疑われる主な病気 |
---|---|
尿の量が多い 尿の色が薄い・透明 | 尿崩症 慢性腎不全 糖尿病 子宮蓄膿症 クッシング症候群 アジソン病 |
尿が少ない まったく出ない | 膀胱炎 尿路結石 急性腎不全 前立腺肥大 |
尿の色が濃い | 尿路結石 |
白い・濁っている | 前立腺炎 膀胱炎 腎盂腎炎 |
血尿 | 膀胱炎 尿路結石 中毒(チョコ・玉ねぎ) |
血・膿が混ざっている | 子宮蓄膿症 |
尿がキラキラ光る | 尿路結石 |
においが甘い | 糖尿病 |
においがキツイ 生臭い | 膀胱炎 前立腺炎 |
なお、これらの症状が見られたら愛犬の元気の有無に関係なく、一度病院で検査してもらいましょう。
尿の異変で疑われる病気は、気力・食欲の低下、下痢、嘔吐、呼吸が荒いなど別の症状が見られる場合もあれば、尿のほかに特に愛犬の様子に変わったところが無い場合もあります。
元気で食欲もあるからと尿の異変を放っておくと、病状が進行する恐れがあります。
そのため尿に異変が見られたら、一度は獣医さんに相談しましょう。
それでは、尿の異変が起こる病気を1つずつ見ていきましょう。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿、元気がなくなる、脱水症状など
尿崩症は、尿の量を調整する「抗利尿ホルモン」の分泌の低下(下垂体性尿崩症)や腎臓の機能低下(腎性尿崩症)により、体内の水分が尿として大量に排出される病気です。
体内から失われた水分を補おうと大量に水を飲むため、水のように薄い色の尿が大量に出ます。
慢性化すると脱水症状を起こしやすく、重症の場合はけいれんや意識障害を起こす危険があります。
【主な症状】尿の量が少ない、尿がほとんど出ない、血尿、頻尿、排尿時に痛がる、尿が臭い、トイレを失敗する
膀胱炎は、尿を貯める膀胱が細菌感染により炎症を起こす病気です。
本来、膀胱は一定量の尿を貯められるように伸縮性がありますが、膀胱炎になると膀胱壁の厚みが増して硬くなります。
膀胱に少量の尿しか貯められないため、「尿の量が少ない」。
膀胱に尿が少し溜まるだけで強い尿意を感じ、「頻尿」。しかし尿はそれほど貯まっていないので「排尿しようとするが、ほとんど出ない」などの症状が見られます。
また強い尿意を感じるため、トイレの場所まで我慢できず失敗(おもらし)することも・・。
さらに、細菌による炎症により排尿を痛がる、血尿、尿の臭いがキツくなる(生臭い)、尿中に結晶(砂状)ができる場合もあります。
膀胱炎の原因菌を除去する必要があるので、すぐに病院へ連れていきましょう。
【主な症状】尿の量が少ない、色が濃い、まったく出ない、尿の色がピンク・オレンジ、血尿、尿に粒がある、尿がキラキラ光るなど
尿路結石は、尿に溶け込んでいるミネラル(マグネシウム・カルシウムなど)の結晶が、腎臓や膀胱で石のように固まる病気。
結石の発生場所によって、尿道結石、膀胱結石、腎結石と呼ばれます。
なお結晶化する成分により、それぞれ病名がちがいます。
尿路結石のタイプ
これらの中で犬に発症が多いのは、「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」です。
ストルバイト結石は、膀胱などの尿路に細菌が感染することが主な原因。
本来、犬の尿は弱酸性(平均でpH6.5)ですが、細菌感染により尿のpHがアルカリ性に傾くことで結石が発生します。
オスよりメス犬のほうが尿路は短いため、細菌が感染しやすく発症が多いです。
一方、シュウ酸カルシウムは肥満が発症リスクを高めるため、適正体重の維持が予防につながります。
●主な症状は・・
尿道に結石ができると、排尿時に強い痛みが起こり「キャン」と鳴く場合も・・。
結石を残尿とかんちがいして頻尿になったり、結石により尿路が傷ついて血尿(血が薄く混ざる場合はピンクやオレンジがかった色の尿)が見られます。
尿がまったく出ない場合は、結石が尿路を完全に塞いでいる(尿道閉塞)可能性があります。
尿がまったく排出されなくなると、尿に含まれる老廃物や毒素が全身にまわる「尿毒症」が引き起こされ危険な状態に。
愛犬が尿をまったくしない場合は、動物病院へ急いで連れていきましょう。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿、元気・食欲がない、嘔吐、下痢、貧血、便秘、歯茎が白いなど
慢性腎不全は、時間をかけて徐々に腎臓の機能が低下する進行性の病気です。
腎機能の低下により、本来腎臓で吸収されるはずの水分がそのまま尿に排出されるため、水のような透明の尿が大量に排泄されます。
また体内の水分を補うため、大量に水を飲む「多飲多尿」の症状が見られます。
なお、腎臓病は初期症状がほとんどなく、腎臓の70~75%以上が破壊されるまで血液検査にも異常があらわれません。
そのため異変に気づいたときには、すでに症状が進行している場合があります。
ただ、多飲多尿は腎臓の破壊が40%進んだあたり見られる場合があるので、多飲多尿に気づいたらすぐ病院で診てもらいましょう。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿、食欲旺盛だが痩せている、疲れやすい、元気がない、下痢、嘔吐など
糖尿病は、血糖値を下げる「インスリン(ホルモンの1種)」が膵臓から正常に分泌されなかったり、分泌されても働きが充分でないために、血液中に糖が多く含まれた状態になる病気です。
血中の糖分を排出するため、大量の尿が排出されます。
また体から大量の水分が奪われるので、それを補うために水をたくさん飲む・・その結果、透明に近い薄い尿が大量に出る「多飲多尿」が起こります。
尿に糖が多く含まれるため、甘いにおいがする場合も・・。
糖尿病は進行すると、腎臓病や白内障などの合併症を引き起こす危険性もあります。
とくに肥満気味の中高齢犬(6歳以上)が発症しやすいので、適正体重の維持が予防のポイントです。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、尿に血や膿が混ざっている、お腹がパンパンに膨らむ、元気がない、食欲不振、嘔吐など
子宮蓄膿症は、子宮に入り込んだ細菌の炎症により子宮内部にどんどん膿(うみ)が溜まっていく病気。避妊手術を受けていない高齢の女の子に多いです。
子宮に膿が溜まるとは同時に、細菌から発生する毒素(エンドトキシン)が尿量を調整する「抗利尿ホルモン」の働きを止めます。
抗利尿ホルモンの低下により、尿をつくる腎臓の機能も低下・・。
本来、腎臓で吸収されるはずの水分が吸収されないため、大量の尿が排出されます。
また体から大量に水分が奪われるため、大量の水を飲み、また大量の尿が排出される「多飲多尿」が引き起こされます。
さらに、子宮に膿が溜まりすぎるとお腹がパンパンに膨らんだような状態に。陰部内の出血や膿が尿に混ざる場合もあります。
なお、子宮蓄膿症は膨らんだ子宮が破裂すると、体内に毒素がまわって短時間で命を落とす危険性があります。
愛犬が高齢で避妊手術を受けていない場合は、「多飲多尿」「尿に血や膿が混ざる」などの症状が見られたら、すぐ動物病院へ連れていきましょう。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿、左右対称の抜け毛、皮膚の黒ずみ、毛がパサつく、お腹まわりが丸く膨らむ、食欲旺盛、体重減少、筋肉量の低下など
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、副腎から分泌される「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」が必要以上に分泌される病気です。
主な症状に「多飲多尿」があるため、色の薄い尿が大量に排出されます。その他には脱毛や毛のパサツキ、皮膚の黒ずみ(色素沈着)、お腹が丸く膨らんだような症状が見られます。
8~12歳くらいの高齢犬に発症が多く、進行すると免疫力が低下して膀胱炎や皮膚炎にかかりやすくなるので注意が必要です。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿、下痢、嘔吐、元気がない、食欲不振、突然のフラつき、体重減少、呼吸困難など
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、1つ前のクッシング症候群とは真逆で、副腎から「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」が十分に分泌されない病気です。
その影響により、薄い尿を大量に排泄する「多飲多尿」をはじめ、嘔吐、下痢、元気・食欲がないなどの症状が見られます。
なお、アジソン病は急性と慢性の2タイプあり、急性の場合は愛犬が強いストレスを受けることがきっかけで発症。
突然のフラつき、急に元気がなくなる、呼吸が荒いなどの症状から、ショック状態に陥ると命にかかわる場合があります。このような症状が見られたら、急いで病院へ連れて行きましょう。
【主な症状】(初期症状)尿の量が多い、尿の色が薄い、多飲多尿(重症化の場合)尿がまったく出ない
急性腎不全はブドウなどの犬が食べてはいけない食品、ユリ科の植物、農薬などの中毒症状によって、短期間(数時間~数日間)で腎機能が低下する病気です。
腎機能が正常に機能しないため、尿がスムーズに排出されず、血液中に老廃物や毒素が残ったままになる「尿毒症」が引き起こされます。
なお、急性腎不全は初期症状に多飲多尿が見られますが、症状が進行すると尿量が少なくなり、重症化すると尿がまったく出なくなります。
緊急性が高く命にかかわるため、すぐ病院へ連れていきましょう。
【主な症状】尿の量が少ない、血尿、便秘、しぶり(力んでも便が出ない)など
前立腺肥大は、去勢手術を受けていない5歳以上の中高齢のオス犬に発症の多い病気です。
尿道の周辺にある前立腺が肥大することが原因で、尿の量が少なくなる、血尿、便秘、しぶり(排便しようと力むが出ない)などの症状があらわれます。
はっきりとした原因は分かっていませんが、ホルモンバランス(エストロゲン・アンドロゲン)の乱れが影響していると考えられています。
【主な症状】尿が濁っている、排尿時に痛がる、尿の量が少ない、においがキツイ、お腹を触られるのを嫌がる、背中を丸めた姿勢でいる、下痢、嘔吐など
前立腺炎は、細菌感染により前立腺が炎症を起こす病気です。
炎症により排尿時に激しい痛みがともなうため、排尿困難な状態に陥ります。尿は濁っていたり、においがキツイ場合も。
また前立腺の炎症が膀胱にまで広がると、膀胱炎を併発してさらに病状が悪化します。
去勢手術を受けることで発症リスクを低下できますが、免疫力が低下する高齢犬は菌に感染しやすいので注意しましょう。
【主な症状】尿の量が多い、尿の色が濁っている、血尿、多飲多尿、発熱、嘔吐など
腎盂腎炎(じんうじんえん)は、腎臓の中にある腎盂(袋状のもの)の細菌感染の炎症により、腎臓が正常に機能しなくなる病気です。
尿をつくる腎臓が正常に機能しないため、体内の水分が尿として大量に排出されます。
また細菌による炎症から、尿の色が濁っていたり臭いがキツい、血尿などの症状が見られます。
急性と慢性の2タイプがあり、急性の場合は血尿や発熱、元気がない、嘔吐など、膀胱炎と似た症状です。
一方、慢性の場合は進行が遅いため、急性に比べて目立った症状がありません。そのため異変に気づいたときには、慢性腎不全だというケースも多いです。
【主な症状】血尿、多尿、下痢、嘔吐、呼吸が荒い、体の震え、不整脈、興奮状態、けいれん、ぐったりしているなど
愛犬が誤ってチョコレートや玉ねぎ、ユリ科の植物、殺虫剤などを口にしてしまい、その中毒症状として血尿や多尿、おもらし(失禁)などの症状が見られる場合があります。
とくに、以下の食べ物は愛犬の目の届く場所に置かないように注意しましょう。
●玉ねぎなどネギ科の野菜
玉ねぎやネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなどのネギ科の野菜は、犬が食べると赤血球が破壊される危険性があります。
血尿、下痢、おう吐、体の震え、呼吸が荒い、黄疸、興奮、不整脈、けいれん、昏睡など
●チョコレート
チョコレートに含まれる興奮作用の「テオブロミン」や「テオフィリン」「カフェイン」は、犬の心血管や神経に悪影響を及ぼす危険性があります。
血尿、おう吐、下痢、ハアハアと荒い呼吸、体の震え、発熱、興奮して落ち着きがなくなる、不整脈、けいれん、昏睡状態など
尿は、愛犬の健康を判断する重要なものです。
尿の色や量、におい、回数、排尿中のしぐさ、排尿するまでの時間など、普段と比べて少しでも異変を感じたら、迷わず動物病院で診てもらいましょう。
なお、尿の異変に気づくには、普段から愛犬の尿の状態を把握しておくこと。
次のポイントを目安に、愛犬の尿をチェックしましょう。
●愛犬の尿の状態は?
【色】色の濃さ、濁り、変色(ピンク・オレンジ・茶色)
【量】いつもと比べて多い・少ない
【におい】臭いがキツすぎないか(臭いがまっく無いのも異常です)
【回数】頻繁ではないか、または少なくないか
【その他】痛がる仕草、尿に膿や粒が混ざっていないか
※参考文献
【一般社団法人ペットフード協会・ペットフート販売士認定講習会テキスト】
「犬・猫の体の構造と生理」「犬・猫の栄養に関する基礎知識」より
※参考サイト:尿に異常がある
※参考サイト:尿路結石症のおはなし
※参考サイト:犬の尿の「役割」
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