「犬は少し太っているくらいが好き」という人も多いと思いますが、犬の肥満は健康に良くありません
犬が肥満になると、どんな危険性があるか見ていきましょう
ぽっちゃり体型の犬はかわいいですが、じつは犬の肥満は万病のもとだと知っていますか?
人と同じく健康のためには肥満の予防、すでに太っている愛犬にはダイエットが必要です。
そこで犬の肥満・ダイエットについて、徹底的に調べてみました。
犬の肥満の危険性・原因、ダイエット方法について、一緒に確認していきましょう。
「犬は少し太っているくらいが好き」という人も多いと思いますが、犬の肥満は健康に良くありません
犬が肥満になると、どんな危険性があるか見ていきましょう
それではまいります。
目 次
見た目のかわいさとは違い、犬の肥満は病気のもとです。
そのため愛犬に元気で長生きしてもらうには、肥満を予防して適正体重を維持することが重要になります。
なお、肥満になると足腰の関節や心臓など、全身に悪影響が及びさまざまな病気のリスクが高まります。
肥満による病気のリスク
●関節炎
肥満になると体重が増えた分だけ、足腰の関節への負担が大きくなります。その結果、関節炎や椎間板ヘルニアなどの関節疾患を発症しやすくなります。
【小型犬の場合】
チワワやトイプードルなどの小型犬は、膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)が脱臼しやすい傾向があります。
すでに膝蓋骨脱臼を発症している愛犬は、肥満によって症状が悪化する危険性があります。
【大型犬の場合】
ゴールデンレトリバーやラブラレトリバーなどの大型犬は、後ろ足より前足のヒジ関節を傷めやすい傾向があります。
大型犬は大きな体を支えるため、肥満体でなくても関節に大きな負担がかかっています。余計な負担をかけないように、適正体重の維持が重要です。
【胴長短足の犬種の場合】
ダックスフンドやコーギーなどの胴長短足の犬種は、ほかの犬種より足腰に負担がかかり椎間板ヘルニアを発症しやすいです。
体質的にどちらも太りやすい犬種なので、食事管理の徹底が欠かせません。
●心臓病
肥満で体が大きくなった分だけ、全身に血液を送る力も必要になります。そのため血液を全身に送る役割がある心臓に大きな負担がかかります。
全身に血液を送ろうと、心臓は大きくなって「心臓肥大」に。
やがて心臓の左心室と右心房の間にあるフタがきちんと閉じなくなる「僧帽弁閉鎖不全(そうぼうべんへいさふぜん)」を発症すると、血液が逆流して心臓にさらに負担がかかります。
●呼吸器障害
首まわりに脂肪が蓄積すると、気道が圧迫されて呼吸がスムーズにできなくなる場合があります。
気道が圧迫されると、ゼーゼーと苦しそうな呼吸や咳の症状があらわれます。
●糖尿病
人と同じく、肥満になると犬も糖尿病のリスクが高まります。
糖尿病は、血液中の糖分(血糖)を正常な値に戻す「インスリン」が正常に分泌されなかったり、分泌されても働きが鈍くて、高血糖状態が続く病気です。
また腎臓や肝臓障害、白内障など、ほかの病気を引き起こす合併症の危険性があります。
●手術時のリスク
脂肪の多い体は、手術時の麻酔が効きにくいことがあります。
麻酔が効かないため、通常よりも麻酔の量が増えて体に負担をかけます。
このように肥満は、さまざまな病気のリスクを高める危険性があります。
肥満は病気のもとです!
コロコロに太った愛犬はかわいいですが、健康のためには適正体重の維持が欠かせません
それでは、愛犬の肥満レベルを確認しましょう。
愛犬が太っているか、ダイエットが必要かを判断するには、体重や体のラインをチェックします。
ちなみに犬の適正体重は、1歳の時点の体重が目安。1歳のときの体重より15%以上増えると、肥満とされています。
ただ、1歳のときの体重がわからない人も多いのでは・・。
そこで、誰でも簡単に犬の肥満レベルを確認できるのが、下記のBCS(ボディコンディションスコア)です。
BCSは愛犬の体の状態から、9つの肥満レベルで評価します。
その評価結果は、1~3が「やせている」、4と5なら「適正」、6が「太りぎみ」7~9は「太っている」と4つのグループに分類されます。
BCSが6以上なら、肥満・ダイエットが必要です。
BCS(ボディコンディションスコア)は、ここで紹介している9段階のタイプのほかに、5段階のタイプもあります
どちらもチェックポイントは同じですが、5段階タイプの評価は、1が「やせすぎ」、2が「やせ気味」、3が「理想体型」、4が「太り気味」、5が「太りすぎ」となります
BCS(ボディコンディションスコア)で確認するのは、「くびれ」「お腹」「肋骨(ろっこつ)」の3つです。
ボディコンディションスコア(BCS)のチェックポイント
●くびれ
犬は上から見て、ウエスト(腰)部分に緩やかな「くびれ」があるのが理想です。
そのくびれが曖昧で分かりにくかったり、見当たらないほど腰回りに脂肪があるのは太りすぎ。
反対に、くびれが骨盤周辺の骨まで確認できる状態はやせすぎです。
●お腹
犬は横から見ると、お腹のラインが後ろ足の付け根に向かって上がっているのが理想です。
しかし肥満体型では、お腹のラインが後ろ足の付け根に向かって上がらず、平行になります。
ちなみに、お腹のラインもくびれと同じく、お腹がくぼんでいるように見えるほど上がっていると、やせすぎで健康に良くありません。
●肋骨(ろっこつ)
肋骨部分は薄い脂肪に覆われているものの、さわると肋骨がすぐ分かる状態がベストです。
肥満レベルが進むと、厚い脂肪で覆われて肋骨がすぐに分からなかったり、肋骨にさわれない状態になります。
一方、やせすぎになると肋骨が脂肪で覆われず、浮き出てしまいます。
以上のポイントを見ながら、愛犬の肥満レベルをチェックしてみましょう。
愛犬の肥満レベルは、「くびれ」「お腹」「肋骨」の3つの体のラインを見て確認しましょう
そもそも、愛犬の肥満の原因って何だと思いますか?
じつは犬の肥満の多くは、とても単純なことです。詳しく見ていきましょう。
健康な犬の場合、肥満の原因のほとんどが「食べすぎ」です。
1日に消費するカロリー以上に、ドッグフードやおやつを食べすぎているため、消費されずに残ったカロリーが脂肪となって、どんどん太っていくのです。
そして、愛犬が食べすぎる根本的な原因は、飼い主さんの与えすぎ。
ドッグフードを目分量で用意したり、必要以上におやつを与えていませんか?
犬は自分で食事を用意できません。愛犬が食べすぎるのは、飼い主さんがご飯やおやつを与えすぎているからです。
「ジャーキー1枚やボーロ2~3粒なら・・」と、私たちから見れば少しの量ですが、愛犬にとってはカロリーオーバーの原因になりかねません。
とくにチワワやトイプードルなどの小型犬は、少量のおやつが肥満の原因になります。
それでは、おやつで摂取するカロリーがどのくらい大きいものか、下記のイラストを見ながら確認していきましょう。
下記は、体重5kgの犬が摂取したカロリーを、成人男性の摂取カロリーに置き換えたものです。
参考サイト:そのおやつ、何カロリー?
体重5kgの犬がジャーキー1枚(35kcal)を食べた場合の摂取カロリーは、成人男性に置き換えるとドーナツ2個分のカロリーに相当します。
「ジャーキーは高カロリーだから・・」と思うかもしれませんが、子犬にも与えやすいボーロも要注意。
一度に数粒与える人も多いと思いますが、結果は・・。
参考サイト:そのおやつ、何カロリー?
体重5kgの犬がボーロ5粒(30kcal)を食べた場合の摂取カロリーは、成人男性に置き換えるとドーナツ1.5個分のカロリーに相当。
たった5粒のボーロが、私たちだとドーナツ1個半を食べたことになる・・
これって、けっこうな量ですよね・・
このように私たちにとっての「ひとくち」が、愛犬には「大盛り」になります。
また犬用のおやつで摂取カロリーがこれほど高いということは、人の食べ物はもっと多くのカロリーを摂取することになります。
「ひと口くらいなら・・」と人の食べ物を与えていませんか?
そのひと口は飼い主さんが思っている以上に、愛犬には高カロリーで体に悪影響を与える危険性があります。
このことから、愛犬の肥満を予防するには、ドッグフードやおやつを目分量や飼い主さんの気分次第で与えないこと。給与量はきちんと守りましょう。
犬の肥満の原因は「食べすぎ」です!
飼い主さんの「少し」は、愛犬にとっては「大盛り」になります
必要以上にご飯やおやつを与えないように、食事管理を徹底しましょう
それでは、愛犬の1日に必要なエネルギー量の求め方について見ていきましょう。
肥満を防ぐには、愛犬の1日に必要なエネルギー量を知ることが大切です。
犬の1日に必要なエネルギー量は、下記の2つの計算式を使って求められます。
犬の1日に必要なエネルギー量の求め方
計算式をもとに、体重5kgの犬の1日のエネルギー量を求めてみましょう。
まず①「安静時エネルギー要求量(RER)」は、愛犬の体重をもとに割り出します。
例)体重5kgの犬の安静時エネルギー要求量(RER)
30×5(体重kg)+70=220kcal
体重5kgの犬の場合、安静時エネルギー要求量(RER)は、「30×5(体重kg)+70」で求められるので、その答えの220kcalが1日安静にしているだけで必要なエネルギー量になります。
そして②の「1日あたりのエネルギー要求量(DER)」は、いま計算した安静時に必要なエネルギー(RER)値と愛犬の状況に当てはまる係数から割り出します。
愛犬の状況に当てはまる係数とは、去勢・避妊の有無や肥満、高齢、子犬の年齢などで個別に設定されています。
それぞれの係数を当てはめた、DERの計算式は下記のとおりです。
犬のDERの計算式(係数×RER)
犬の健康状態 | 係数×RER | |
---|---|---|
去勢・避妊済みの成犬 | 1.6×RER | |
肥満傾向 | 1.4×RER | |
高齢 | 1.4×RER | |
妊娠中 | 1~4週(妊娠1ヶ月) 5~6週(妊娠1ヶ月半) 7~8週(妊娠2ヶ月) |
2.0×RER 2.5×RER 3.0×RER |
授乳中 | 4~8×RER | |
成長期 | 4ヶ月未満 4~9ヶ月 10~12ヶ月 |
3.0×RER 2.5×RER 2.0×RER |
それでは、体重5kgの犬が肥満ぎみの場合のDER(1日あたりのエネルギー要求量)を求めてみましょう。
例)体重5kgの犬(肥満傾向)の1日あたりのエネルギー要求量(DER)
DER=1.4×RER(30×5+70)=308kcal
体重5kgの犬が肥満ぎみの場合、先ほど求めた安静持エネルギー要求量(RER)の220に1.4をかけるので、DERは308kcalになります。
このDERの数字が、1日に必要なエネルギー量です。
ですから、1日に与える食事(ドッグフード・おやつも含む)の合計が、合計で308kcalになるように調節すれば、その量が愛犬にベストなご飯の量になります。
犬の必要なエネルギー量は、2つの計算式をもとに割り出すことができます
愛犬の1日に必要なエネルギー量を求めてみましょう
ただ、今まで愛犬に与えていたご飯の量が、計算式で求めたカロリーより多い場合、急にドッグフードの量を減らしてはいけません。
それでは、どのように減量すれば良いのか、犬のダイエットの注意点を見ていきましょう。
犬のダイエットのポイントは、地道にコツコツすること。
減量したいからと、ドッグフードやおやつの量を急に減らすと、愛犬がストレスを感じたり栄養不足によって体調不良を起こす危険性があります。
そのため愛犬のダイエットは、焦らず長期的におこないます。
最初はおやつを減らすことからスタートして、つぎにドッグフードの量を減らしていきましょう。
犬のダイエットのポイント
1つずつ見ていきましょう。
犬の肥満の多くが、おやつの食べすぎです。おやつは1回に与える量が少ないため、つい何度も与えて、結果的に多くのカロリーを摂取させている傾向があります。
ただ、急におやつを与えなくなると愛犬はストレスを感じるので、まずはおやつの量を半分に減らすことから始めましょう。
犬はおやつの量より、与えられた回数により喜びを感じます。ですから、おやつの回数を変えず、量だけ減らせば問題ありません。
ちなみに、おやつを1日の摂取カロリーの10%以内にすれば、ダイエット中もおやつを与えてOKです。
とはいえ、パンやケーキなど人の食べ物は絶対に与えないように徹底しましょう。
おやつの次は、ドッグフードの量を減らします。
ちなみに体重5kgの犬が肥満ぎみの場合、1日に必要なエネルギーは308kcalです。
●肥満犬に必要なエネルギーの求め方(体重5kgの犬の場合)
例)体重5kgの犬(肥満傾向)の1日あたりのエネルギー要求量(DER)
DER=1.4×RER(30×5+70)=308kcal
※RER(安静時に必要なエネルギー)の求め方
30×(体重kg:この場合5kg)+70=220kcal
体重5kgの犬がダイエットするには、ご飯(ドッグフード・おやつも含む)の摂取カロリーを計算式で求めた1日に必要なエネルギーの308kcalに制限すること。
ただ、今まで与えていたドッグフードの量が多すぎて、摂取していたカロリーと計算で求めた値の差が大きい場合は、急に計算で求めたカロリーまで減らしてはいけません。
急にドッグフードの量が少なくなると、愛犬は物足りなくてストレスを感じます。また急激なカロリー制限によって、栄養不足を起こし体調を崩す危険性もあります。
そのため、まずはドッグフードを今まで与えていた量から5~10%減らすことからスタートしましょう。
愛犬の体調に異変がないか確認しながら、計算で求めたエネルギー量に少しずつ近づけていきます。
週に1度は、愛犬の体重とボディラインをチェックしましょう。
犬のダイエットは、長期的に少しずつ減量させることが大切です
愛犬がストレスを感じたり栄養不足にならないように、焦らずおこないましょう
また、愛犬のダイエットには下記のドッグフードがおすすめです。
ダイエットにおすすめのドッグフードは?
●低カロリー・低脂肪のドッグフード
低カロリーフードは、高カロリーフードより多くの量を食べても摂取カロリーが抑えられるので、愛犬も物足りなさを感じずにカロリー制限ができます。
また、脂質を摂りすぎると肥満になりやすいので、低脂肪の栄養バランスがおすすめです。
【低カロリー】360kcal/100g以下
【低脂肪】脂質12%以下
●原材料に穀物が使用されている
穀物(トウモロコシや小麦、お米など)は食物繊維が豊富に含まれているので、ドッグフードのかさを増やす効果があります。
なお、食物繊維は体に吸収されないので、たくさん食べても摂取カロリーが抑えられます。
さいごに、とくに肥満に注意が必要なワンちゃんについて確認しましょう。
去勢・避妊済みの犬や高齢犬は、去勢・避妊していない成犬より太りやすい傾向があります。
それぞれの注意点をチェックしましょう。
●去勢・避妊すると太りやすくなる
去勢・避妊した犬はホルモンの影響により、去勢・避妊していない犬に比べて平均25%も1日のエネルギー必要量が低下します。
そのため愛犬が去勢・避妊手術をおこなったら、今までどおりの食事量を与えると肥満になる可能性があるので注意しましょう。
ちなみに体重が同じ5kgでも去勢・避妊の有無によって、1日に必要なカロリーは44kkcalもちがいます。
愛犬が去勢・避妊後に太ってきたな・・と感じた場合は、ドッグフードの量を見直してみましょう。
●高齢になると太りやすくなる
犬は7歳以上の高齢になると、若い頃より運動量が減り、基礎代謝も落ちるため、エネルギーの消費量がグッと減ります。
そのため若い頃と同じ高カロリーのドッグフードや給与量では、肥満になる恐れがあるので注意しましょう。
犬の肥満は足腰の関節や心臓、呼吸器など、全身に悪影響を与えます。
そのため見た目がかわいくても、愛犬を肥満にさせないように注意が必要です。
なお、愛犬の肥満は「食事の管理」と「適度な運動」でほとんどが予防できます。
毎日の散歩とドッグフードやおやつの量をきちんと管理して、愛犬のダイエット・肥満を予防しましょう。
(参考文献)
【一般社団法人ペットフード協会・ペットフート販売士認定講習会テキスト】
「犬・猫の栄養に関する基礎知識」より
参考サイト:肥満が原因でなりやすい病気
参考サイト:肥満はすでに病気です。
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