犬の嘔吐は、危険性の低いものと危険性の高いものがあります
愛犬の嘔吐はどちらのタイプか、見分け方のポイントを確認しましょう
朝起きたら、愛犬が吐いていた!
愛犬が苦しそうに吐く姿を見ると、心配で不安になります・・。
しかし、吐いた後の愛犬はいつもと変わらず元気で食欲もある場合も多いですよね。
じつは犬が吐く原因は、危険性の低いものと高いものがあります。
それでは、愛犬の嘔吐の危険性を見分けるため、犬が吐く原因、吐く液体の色、吐いたあとのご飯の与え方について、一緒に確認しましょう。
犬の嘔吐は、危険性の低いものと危険性の高いものがあります
愛犬の嘔吐はどちらのタイプか、見分け方のポイントを確認しましょう
それではまいります。
目 次
犬が吐く原因は、危険性の低いもと高いものがあります。そこで、まずは愛犬の嘔吐(おうと)が危険なものか確認しましょう。
ポイントは愛犬に元気や食欲があるか、嘔吐以外の症状がないかです。
●危険性の低い嘔吐
【症状】嘔吐だけ、食欲・元気がある
【吐いたもの】透明~黄色の液体、または泡、ドッグフード
【原因】空腹や早食い、ストレス、乗り物酔いなど
●危険性の高い嘔吐
【症状】嘔吐のほかにも下痢、大量のよだれ、発熱、食欲・元気がない、何度も吐く
【吐いたもの】茶色、血が混ざっている
【原因】ウイルス感染、誤食、消化器官の病気(胃潰瘍、すい炎、アジソン病、がん、胃捻転など)
それでは、犬が吐く原因に多い「危険性の低い嘔吐」から詳しく見ていきましょう。
「愛犬が吐いた後、何事もなかったようにケロリとしている」
「いつもと変わらず元気・食欲がある」
吐く以外に愛犬の様子や行動に何も変わりがなければ、危険性は低いと考えられるので、ひとまず様子を見てかまいません。
なお、危険性の低い嘔吐(おうと)の原因は、空腹や早食い、ストレス、乗り物酔いなどです。
●危険性の低い嘔吐
【症状】嘔吐だけ、食欲・元気がある
【吐いたもの】透明~黄色の液体、または白い泡、ドッグフード
【原因】空腹や早食い、ストレス、乗り物酔いなど
原因別に1つずつ確認しましょう。
犬が吐く原因で多いのが、空腹時間が長すぎること。犬は空腹状態が長時間続くと胃液や胆汁嘔吐く場合があります。
とくに空腹時間が長くなるのは、夜から朝にかけて。そのため、「朝起きたら愛犬が吐いていた」という場合がほとんどです。
そのとき黄色の液体や白い泡が吐き出されていると思いますが、それが胃液や胆汁です。
●胃液・胃酸
【色】透明の液体、白い泡
【臭い】ほとんどない
●胆汁
【色】黄色
【臭い】ツーンとした臭い
空腹が長時間続くと、胃の働きが低下して胆汁(肝臓から分泌される消化液)が逆流しやすく、その影響で嘔吐が引き起こされます。
また、空腹時は「逆流性胃炎(胆汁嘔吐症候群」のリスクも高くなります。
逆流性胃炎は、胃に胆汁や膵液(すいえき)が逆流して胃を刺激する症状です。原因は明らかではありませんが、空腹時に発生しやすく注意が必要です。
空腹が原因の嘔吐を防ぐには、空腹時間を短くすることです。
愛犬が早朝に吐く場合は、夜ご飯を寝る前、または夕方と寝る前に分けて与えましょう。
お昼に吐いている場合は、食事回数を1日2回から1日3回に分けるなど、できるだけ空腹時間を短縮することがポイントです。
とくに子犬は胃が小さく、一度にたくさんの量を食べられません。そのため空腹が原因の嘔吐を起こしやすいので、こまめに食事を与える必要があります。
「朝起きたら黄色い液体や泡嘔吐いていた」という経験は、ほとんどの飼い主さんが経験していると思います
なお、愛犬の体調によっては、ご飯の量や時間を変えていなくても吐く場合があります
1日だけなら問題ありませんが、数日続く場合は一度病院で診てもらいましょう
愛犬が空腹が原因で吐いても、ご飯をすぐに与えるのは控えましょう。
吐いた直後は、逆流した胃酸によって食道の粘膜が炎症を起こしている可能性があります。
そんなデリケートな状態でご飯を与えると、ご飯が通過する刺激で再び吐いてしまう恐れがあります。
ですから、吐いた直後はご飯を与えないこと。愛犬の様子を確認しながら、最低でも30分は時間を空けましょう。
●愛犬が吐いたときのご飯は・・
愛犬が元気な様子でも食道や胃は敏感になっているので、お腹に負担をかけない消化しやすい食事を与えましょう。
●吐いたときの食事のポイント
①ご飯の量はいつもより減らす
②ドッグフードをぬるま湯(40℃前後)でふやかす
または水を加えたドッグフードを電子レンジで10秒ほど温める
嘔吐いた原因が空腹以外(早食い、ストレス、乗り物酔い)の場合もドッグフードをふやかして与えると、お腹に負担をかけずに消化されるのでおすすめです。
つづいて、空腹以外の危険性の低い嘔吐の原因(早食い、ストレス、乗り物酔い)について見ていきましょう。
ご飯を食べた直後に、愛犬がドッグフードをそのまま丸ごと吐き出す行為は「吐き出し」と呼ばれ、多くは早食いが原因で起こります。
●「嘔吐」と「吐き出し」のちがい
【嘔吐】
食べ物を消化した、もしくは消化不良によって吐く行為。
吐く前は、背中を丸めて吐こうと動いたり、コポコポとお腹を膨らませたり引っ込ませたりする行動が見られる。
【吐き出し】
ご飯が胃に届く前に、反射的に吐かれる行為。
吐く兆候がほとんどなく、ご飯を食べた直後に丸ごとご飯嘔吐き出す。
ご飯を一気に食べすぎたことに体が反応して起こるため、愛犬は吐いた後もケロッとしており、吐いたご飯をもう一度食べようとします。
ご飯の早食い・丸飲みによって、たまに吐くのは問題ありません。
しかし頻繁に吐き出すのであれば、食道が拡張した「巨大食道症」や喉の炎症の疑いがあるので、吐き出しが多い場合は病院へ連れていきましょう。
●「吐き出し」を防ぐには?
吐き出しを防ぐには、ご飯の早食い・丸飲みを防止すること。
早食い防止のお皿を利用したり、ドッグフードをふやかして一度に吸い込めないようにしましょう。
なお、早食いや丸飲みは吐き出しだけでなく、窒息や胃がねじれて呼吸困難を引き起こす「胃捻転」の危険性もあります。
とくに胃捻転は早急な処置が必要で、最悪の場合は命を落とすこともあるため、愛犬の早食い・丸飲みには注意しましょう。
高齢犬は飲み込む力(嚥下力:えんげりょく)が低下して、食べ物が喉に詰まりやすくなります
吐き出す力も弱く、吐き出そうとしても上手く吐き出せない場合もあるので、早食いでなくても食べやすい食事を用意してあげましょう
犬はストレスや乗り物酔いが原因で吐く場合があります。
とくにドッグフードの急な変更や引っ越し、シャンプーなどにストレスを感じて吐くことが多いので注意しましょう。
●ドッグフードの変更
ちがう種類のドッグフードに急に変更すると、消化器官が対応しきれず消化不良を起こして吐く場合があります。
そのためドッグフードの切り替えは、1~2週間ほど時間をかけて少しずつ体に慣れさせましょう。
とくに消化力の落ちた高齢犬、消化機能が未熟な子犬、お腹の弱い愛犬は要注意です。
●シャンプー・車で移動する前の食事はひかえて
ションプー嫌いな愛犬だけでなく、体力の低下した高齢犬はシャンプーやトリミングに疲れて吐くことも・・。
また、車に長時間乗ると人と同じように乗り物酔いで吐く愛犬もいます。
どちらもお腹に食べ物があると気持ち悪くなりやすいので、シャンプー(トリミング)や車に乗せる直前にご飯を与えないようにしましょう。
●引っ越しなど、環境の変化によるストレス
引っ越しや新しいペットの迎え入れなど、環境の変化にストレスを感じて吐くこともあります。
愛犬が新しい環境に早く慣れるように、リビングなど家族が集まる場所に愛犬のお気に入りのベットや毛布などを置いて、愛犬のスペースを作ってあげましょう。
ここまでが、危険性の低い嘔吐の原因(空腹・早食い・ストレス)です。
愛犬が吐いた後も元気で嘔吐の回数も1回だけなら、そのまま様子を見ましょう。
ただ、食事回数を増やして空腹時間を短くしたり、早食い防止の工夫をしても頻繁に吐くようであれば、一度獣医さんに相談しましょう。
吐いた後も愛犬が元気で食欲もあれば、空腹や早食いが原因の場合がほとんどです
ただ頻繁に吐くと、胃酸の逆流によって食道や胃に負担がかかります
ご飯の与え方を見直しても愛犬が吐く場合は、獣医さんに一度診てもらいましょう
つづいては、危険性の高い嘔吐の原因についてです。
吐く以外に、下痢、大量のよだれ、発熱、元気・食欲がないなど、愛犬のようすに異変があれば、危険性の高い嘔吐(おうと)の疑いがあります。すぐに病院へ連れていきましょう。
●危険性の高い嘔吐
【症状】嘔吐、下痢、大量のよだれ、発熱、食欲・元気がない、呼吸が苦しそう、ぐったりしている、触られるのを嫌がる、何度も吐く、吐きたそうにしているけど吐けないなど
【吐いたもの】茶色、血が混ざる場合がある
【原因】ウイルス感染、誤食、消化器官の病気(胃潰瘍、すい炎、アジソン病、がん、胃捻転など)
1つずつ確認しましょう。
ウイルスや寄生虫に感染すると、嘔吐を何度も繰り返して元気や食欲もありません。ほかにも下痢や発熱、血便などの症状がみられます。
嘔吐を起こすウイルス・寄生虫
なお、ウイルスはワクチン、寄生虫は駆除することで両方とも感染を予防できます。
犬の体質によっては、ワクチンにアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こす場合もあります
副作用のリスクもあるため、ワクチンの接種は獣医さんとよく相談しておこないましょう
「チョコレートやブドウ、おもちゃを誤って食べてしまった」
「殺虫剤のかかった草をなめた」などの誤食にも注意が必要です。
犬が食べると危険な食品
犬がこれらの食品を食べると、嘔吐や下痢になるだけでなく、体の震え、貧血、不整脈、けいれんなどを起こして、最悪の場合は命を落とす危険性があります。
ちなみに、犬が食べても良いリンゴやキャベツも、与えすぎると嘔吐の原因になるので注意しましょう。
また、子犬は目の前にあるものを何でも口に入れるので、小さなおもちゃを誤って飲み込んでしまう場合があります。
愛犬の目につく場所に、小さなおもちゃ、ボタン、ひも(胃に絡まる恐れあり)、電池、磁石などを置かないように気をつけましょう。
それから散歩のときに草を舐めたり食べる癖がある愛犬は、殺虫剤や除草剤を知らずに摂取する恐れがあります。
おもちゃの誤飲・薬品の摂取の場合は、おもちゃの取り出しや解毒処置が必要です。愛犬の異変に気がついたら、すぐに病院へ連れていきましょう。
チョコレートを少量食べた位なら、何も症状がない場合もあります
その場合はひとまず様子を見てかまいませんが、愛犬の異変にすぐ気がつけるように引き続き注意して見てあげましょう
毎日のように愛犬が吐く、下痢をする、元気・食欲がない、体重が落ちているなどの場合は、胃腸や膵臓など消化器系の病気が疑われます。
嘔吐で疑われる病気
●胃潰瘍の主な症状
茶色の液体を吐く、黒い便が出る、食欲・元気がない
※茶色の液体は、胃酸によって変色(酸化)した血液の色です
胃潰瘍(いかいよう)は、何らかの原因で大量に分泌された胃酸によって胃自体が消化される病気です。
犬の胃潰瘍の原因ははっきりと分かっていませんが、薬の服用による副作用が影響していると考えられています。
●腸閉塞の主な症状
嘔吐、腹痛、食欲低下
腸閉塞は、胃や腸に何かが詰まり食べ物を通過することができず、腸の機能が低下した状態です。
胃腸を詰まらせる主な原因は、おもちゃやボタンなどの誤食、大量の寄生虫、ヘルニア、がんなど。
腸閉塞の原因を取り除くための手術が必要です。
●膵炎の主な症状
嘔吐、下痢、激しい腹痛、消化不良、体重減少など
膵炎は、膵臓から分泌される膵液に、膵臓自体が消化されて炎症を起こす病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」の2種類あり、急性膵炎は激しい腹痛をともなうため、愛犬がお腹を抱えるように体を丸めたり、前足だけ床につけた「祈りのポーズ」で腹痛に耐えるなどの症状が見られます。
脂肪分の多い食事は膵炎のリスクを高めるので、脂肪分の多いおやつの与えすぎには注意が必要です。
●IBD(炎症性腸疾患)の主な症状
慢性的な嘔吐・下痢、食欲不振、体重減少など
IBD(炎症性腸疾患)は、原因不明の慢性的な胃腸炎。
毎日ではなくても、「定期的に下痢や嘔吐をする」「お腹がずっと緩い」などの症状があり、食欲低下や体重の減少が見られる場合はIBDの疑いがあります。
IBDの完治はむずかしいため、症状を軽減するために食事療法などの処置が必要です。
●消化器のがんの主な症状
嘔吐(血が混ざる場合もある)、下痢、咳、免疫力の低下、食欲不振、体重減少など
消化器(胃、腸、肝臓)やリンパに悪性の腫瘍(がん)を発症すると、慢性的な下痢や嘔吐、血便、食欲・気力の低下、体重減少などの症状が見られます。
早期発見が重要なので、愛犬のようすに異変を感じたらすぐに動物病院へ連れていきましょう。
●アジソン病の主な症状
多飲多尿、嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少など
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎という臓器が低下する病気。
副腎から「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」が十分に分泌されない影響から、体力が低下して疲れやすく、筋力低下、低血圧などの症状が見られます。
●腎不全の主な症状
多飲多尿、嘔吐、食欲低下、脱水、低体温、けいれんなど
腎不全は、尿や毒素を排出する腎臓が正常に機能しなくなる病気です。
【急性腎不全】
数日間のうちに腎臓の機能が低下して、老廃物や毒素が血中に増加する「尿毒症」の状態になります。
【慢性腎不全】
徐々に腎臓の機能が低下して、急性腎不全と同じく「尿毒症」を引き起こします。
腎臓病の症状がは、腎臓の70~75%以上が破壊されるまで症状があらわれないため、気づきにくい病気です。
多飲多尿の症状に気がついたら、すぐに病院へ連れて行くこと。
またナトリウムやリンの過剰摂取は腎臓病のリスクを高めるので、与えすぎないように注意しましょう。
●胃捻転の主な症状
吐こうとするが吐けない、大量のよだれ、呼吸が苦しそう、お腹がパンパンに腫れているなど
愛犬が吐こうとしても吐けず、大量のよだれや呼吸が苦しそうな場合は「胃捻転(胃拡張胃捻転)」の危険性があります。
胃捻転は、胃の中でガスが大量発生したことにより胃がねじれて、食べ物を吐き出すことも腸へ移動することできない状態になること。
ショック状態になりやすく、早急の治療が必要です。
なお、胃捻転は食後すぐの散歩や早食いで発症する危険性があります。
とくに大型犬は起こりやすいので、食後すぐの散歩は絶対しないこと。
散歩は食事の前か、食後2時間以上経ってからにしましょう。
●子宮蓄膿症の主な症状
多飲多尿、嘔吐、元気・食欲がない、陰部からの分泌量(血液や膿)が増える、毛艶がなくなるなど
子宮内膜症は、避妊していない高齢のメス犬に多い病気です。
子宮の中に細菌が感染することが原因で、子宮内に膿がどんどん溜まります。
子宮内部に溜まった膿が体内で破裂すると、命に関わるため早急な処置が必要です。
愛犬が吐いた後、元気や食欲がない、いつもと様子がちがうなどの異変を感じた場合は、すぐに病院へ連れていきましょう。
犬が吐く原因は、空腹や食べすぎなどの危険性の低いものから、命にかかわる危険なものまでさまざまです。
そのため愛犬が吐いた場合は、まず愛犬の様子(元気・食欲の有無など)を確認して危険であるか見分けましょう。
なお、自分で判断がむずかしい場合は、かかりつけの獣医さんに診てもらいましょう。
(参考文献)
【一般社団法人ペットフード協会・ペットフート販売士認定講習会テキスト】
「犬・猫の体の構造と生理」「ペット飼育の基礎マナー」より
参考サイト:ワンちゃんの病気(症状で調べる)
参考サイト:犬が吐いてしまったら…
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