肥満は関節や心臓に負担をかけます
愛犬を太らせないように体重管理に注意しましょう
「公園に置いてあったキャットフードを愛犬が食べた!」
これは私の愛犬の体験談ですが、犬と猫を飼っているお家でも「お皿に残ったキャットフードを愛犬が食べてしまった…」なんて似た経験がある人も多いのでは?
またキャットフードはドッグフードより味が濃いため、愛犬がドッグフードよりキャットフードを気に入って食べないかも心配です。
そこで犬がキャットフードを食べても問題ないのか、ドッグフードの代用にキャットフードを使用できるのか調べてみました。
さっそく、ドッグフードとキャットフードの違いについて、詳しく見ていきましょう。
目 次
結論からいうと、ドッグフードとキャットフードは全くの別物。キャットフードをドッグフードの代わりとして愛犬に与えるのは絶対NGです。
その理由は犬と猫に必要な栄養バランスはそれぞれ違うから。
少量食べた程度なら何も問題ありませんが、毎日のように犬にキャットフードを与えたり、猫にドッグフードを与えるのは健康に良くありません。
それでは犬と猫の必要な栄養バランスがどのように違うのか、詳しく見ていきましょう。
まず犬と猫は体に必要な栄養バランスが違うことから、食べ物の習性(食性)も違います。犬は肉食に近い「雑食」であるのに対して、猫は完全な「肉食」です。
ちなみに犬の祖先は肉食のオオカミですが、犬は人と生活をともに過ごしてきた結果、人の食生活の影響を受けて雑食へと体が変化しました。
その証拠に、現代の犬の消化器官は人とほぼ同じ。発達した小腸・大腸・盲腸を持っていて、大腸と盲腸には一部の繊維を分解する微生物も存在しています。
この微生物は腸内細菌の働きによって活性化するため、微生物の働きを高めるには腸内細菌のエサとなる食物繊維を摂取する必要があります。
ですから犬の腸内に存在する微生物を有効活用するためにも、犬は食物繊維が豊富に含まれる野菜や果物などの植物性食品を摂取する必要があるのです。
一方、猫の消化器官は犬よりも未熟。小腸は犬と同じく発達しているものの、大腸は貧弱で盲腸はほぼ存在していません。
なお食物繊維の利用には盲腸の働きが欠かせないため、盲腸がほとんど存在しない猫は食物繊維をうまく利用できません。
また犬の消化器官の長さが体長の約5~7倍に対して、猫の腸の長さは体長の約4倍。
体長の約4倍しかない短い腸は肉食動物の特徴の1つで、食物繊維の消化は苦手ですが肉に含まれるタンパク質と脂肪の消化・吸収には最適です。
そのため肉食の猫は雑食の犬より、多くのタンパク質や脂肪が必要だと考えられています。
どのくらい必要量がちがうのか、次から詳しく見ていきましょう。
猫はほ乳類の中でもタンパク質の必要量が多い動物の1つ。
そのためペットフードの栄養基準を設定するAAFCO(米国飼料検査官協会)では、猫に必要なタンパク質の量を子猫(幼猫)が30%、大人の猫(成猫)は26%に設定しています。
ちなみに犬に必要なタンパク質の量は子犬(幼犬)が22.5%、成犬は18%。成犬に必要なタンパク質の量は成猫の2/3程度です。
またナトリウムやナイアシン(ビタミンB3)も猫のほうが多くの量が必要です。
まず猫に必要なナトリウムの量は、犬の必要量の2.5倍。キャットフードの味が濃い理由は、ドッグフードよりナトリウム(塩分)が多く含まれているからです。
もう1つのナイアシンは、犬の必要量の4倍以上の量が猫には必要。ナイアシンは肉や魚に多く含まれている栄養素の1つで、糖質や脂質、タンパク質を分解しエネルギーをつくりだす手助けをします。
このように犬と猫に必要な栄養バランスは全然ちがうため、キャットフードを犬に与えたり猫にドッグフードを毎日のように与えると体に悪影響を与えます。
どのような危険性があるのか、1つずつ確認しましょう。
キャットフードを犬に与えると、肥満や心臓病のリスクが高まる危険性があります。
なぜならキャットフードはドッグフードより高タンパク高脂質。また脂質が多い分、カロリーも高くなる傾向があります。
そのため愛犬にキャットフードを与え続けると、脂質・カロリーを必要以上に摂り過ぎる結果、肥満になってしまうのです。
なお、「少し太っている位が1番かわいい」と思う飼い主さんもいると思いますが、肥満は心臓や関節など、全身の機能に悪影響を与えます。
まず肥満になると、体重を支える手足や腰などの負担が大きくなります。足腰の関節や靭帯、椎間板などを傷める原因になるので注意が必要です。
また肥満体型は全身に血液を送り出す力がより多く必要になるので、心臓にも負担がかります。
ちなみに心臓病のワンちゃんも適正体重を維持することで、症状が軽くなったケースも実際に確認されています。
そのほかにも肥満は、糖尿病のリスク、呼吸器への負担、手術時のリスクなどに悪影響を与えるため、適正体重の維持を心がけることは健康維持の重要なポイントです。
肥満は関節や心臓に負担をかけます
愛犬を太らせないように体重管理に注意しましょう
さらにキャットフードはドッグフードより塩分(ナトリウム)が多く含まれているので、愛犬が塩分を摂り過ぎる危険性もあります。
犬も塩分(ナトリウム)は必要ですが、必要量は猫の40%程度とわずかな量で十分。そのためキャットフードに含まれる塩分量では、犬は塩分過剰にすぐ陥ってしまいます。
なお若くて健康なワンちゃんは塩分を必要以上に摂取しても、不要な分は尿と一緒に体外へ排出されるので問題ありません。
しかし心臓病になると体内の塩分をスムーズに排出できなくなるので、心臓への負担が大きくなり症状を悪化させる危険性があります。
また心臓病と同じく高齢のワンちゃんに多い腎臓病は、少量の塩分でも症状が進行する恐れがあるので塩分の過剰摂取には注意が必要です。
心臓病と腎臓病はどちらも10歳以上の高齢犬に多い病気です。
ただ若いときに塩分の多い濃い味に慣れていると、高齢になってから薄味のドッグフードに変えても食べない場合もあります。そのため年齢に関係なく、塩分の摂り過ぎには注意しましょう。
濃い味に慣れてしまうと薄味のドッグフードを食べなくなるので要注意!
キャットフードだけでなく人の食事も与えるのはNGです
次は、猫にドッグフードを与えた場合の危険性です。
ドッグフードはキャットフードに比べると、タンパク質や脂質、塩分が控えめ。キャットフードよりもヘルシーな感じですが、猫にドッグフードを与えるのも良くありません。
まず猫は犬よりもタンパク質と脂質、ナトリウム(塩分)、ナイアシンをたくさん摂取する必要があるため、ドッグフードでは栄養不足になります。
とくにタンパク質は全身の細胞のもととなる成分、脂質は皮膚の乾燥を防止したり毛並みのツヤの維持に欠かせません。
ほかにも食事から摂取する必要がある必須アミノ酸は、犬が10種類に対して猫はその10種類にタウリンをプラスした11種類と、猫のほうが1種類多いです。
そのためドッグフードでは、猫の必須アミノ酸であるタウリンが含まれていない場合があります。
なお、タウリンは心臓の収縮運動や正常な視力の維持、肝臓の解毒作用、繁殖機能などに関わる成分。
不足すると心筋症や網膜の萎縮、繁殖機能の低下、成長の遅れなどの欠乏症が引き起こされるので注意が必要です。
またタウリン以外にも注意が必要なのがビタミンA。ビタミンAは正常な視覚や健康的な皮膚・毛並み・粘膜・歯の維持に欠かせないため、犬にとっても大切な栄養素です。
ただ犬と猫がちがうのは、β-カロテン(ベータカロテン)をビタミンAに変換できるかどうか。
犬は体内でβ-カロテンをビタミンAに変換できますが、猫はβ-カロテンをビタミンAに変換できません。
そのため猫にはビタミンAそのものを与えないと、ビタミンA不足に陥ってしまうのです。
なお犬がβ-カロテンをビタミンAに変換できて、猫が変換できない理由も食性(食べ物の習性)が関係しています。
そもそもβ-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換される成分。ニンジンやモロヘイヤ、ミカンなど植物性食品に含まれています。
しかし猫は完全な肉食動物のため、ほぼ植物性食品にしか含まれていないβ-カロテンをうまく利用できないのです。
一方、ビタミンAはレバーやあんこうの肝、うなぎなど、動物性食品に多く含まれているので、肉食の猫も雑食も犬もどちらも利用できます。
ほかにも猫は果物に含まれる果糖(フルクトース)を代謝できないので、果物を与えるのは控えるほうがベター。
ちなみに果物味のキャットフードは主原料にカツオやマグロなどの魚を使用し、果物は少量しか含まれていません。
ただ猫は甘味に対する感受性がないので、果物味のキャットフードは猫よりも飼い主さんの購買意欲を刺激するために作られた商品だと考えられます。
愛猫が喜んで食べているなら問題ありませんが、本来猫に果物は必要ありません。
一方、犬は甘味を好んで食べるので果物もよく食べます。ただ果物は糖分や繊維が多く含まれているので、与え過ぎは肥満や下痢を起こす場合があるので要注意。
犬と猫の食事はドッグフード・キャットフードを中心に与え、他の食材を与える場合は少量に留めるようにしましょう。
猫は純粋な肉食動物
甘味を感じないので果物は不要です
犬と猫では必要な栄養バランスがまったく違います。そのため愛犬には愛犬にベストなドッグフードを、愛猫には愛猫にベストなキャットフードを選んであげましょう。
また犬と猫に必要な栄養バランスのちがいを知ると、ドッグフードのトッピングやおやつなどに食材を利用するときも参考になります。
愛犬の体を健康に保つためにも、愛犬に必要な栄養を含んだ食材を与えてあげましょう。
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